『思い出のマーニー』、監督を務められたのは米林宏昌さんです。初監督作品は『借りぐらしのアリエッティ』でした。
今回は、そんな『借りぐらしのアリエッティ』の公開前年に語られた、宮崎監督へのインタビュー動画をご紹介します。以下の4つの動画は、アリエッティに絡めつつ、それを越えたアニメーション論が展開されている非常におもしろいインタビューとなっています。必見です。ただし同時に辛辣な内容です。
宮崎監督がアリエッティを語る!
宮崎監督へのインタビューは1:09頃からです。開口一番、宮崎監督の衝撃発言が飛び出します(笑)米林さんをアリエッティの監督に起用した理由は…
米林さんを監督に起用した理由は、
「人がいなかったんです。で、もうひとつは勘です。ホントそれしかないんです。それ以上説明しようがないんです。だから、これ以上立ち入ると、その、彼の主体性を奪うことになるっていう限界までは、手助けをしましたけど、そこからは引きました。」
「賭けみたいなもんですよね。」
「賭けみたいなもんですよね。」
そんな理由ですか(笑)しかし全体的には米林さんの才能を認めつつ、“ここで満足するな”と発破をかけるような内容になっています。
宮崎監督と米林監督のエピソード
続いての動画は米林監督とのエピソードですが、これまた強烈な叱咤激励となっています。そして、ここから興味深いアニメーション論へと内容がシフトしていきます。
辛辣なことを言いながらも、米林監督に関しては、
「やな奴だったら(監督を)やらせませんからね。そりゃ良い奴なんです(笑)でも良い奴は映画作れませんからね、困るんです。」
「飾らないで、油断したまんま生きてるから、みんなけっこう麻呂(米林さんの愛称)好きなんですよ。…そういう人徳の部分もあるんですよ、麻呂がやるんならしょうがないね、じゃあ手伝うわとかそういうことがあるんです。それも大事な要素でね。ひとりで尖っててね、“勝手にやれば?”ってなったらやっぱりダメですから。」
「飾らないで、油断したまんま生きてるから、みんなけっこう麻呂(米林さんの愛称)好きなんですよ。…そういう人徳の部分もあるんですよ、麻呂がやるんならしょうがないね、じゃあ手伝うわとかそういうことがあるんです。それも大事な要素でね。ひとりで尖っててね、“勝手にやれば?”ってなったらやっぱりダメですから。」
という発言も。ほかにも「美術のスタッフ全部クビにしちゃったことがあって。」という衝撃の過去が…。
宮崎監督が原作に惹かれた理由
続いての動画では、原作に惹かれた理由とともに、アニメーション界の抱えるシビアな現実と世代間に現れた好奇心の変化が語られています。
『借りぐらしのアリエッティ』の舞台が日本になった理由として、
「今の日本を舞台にしなきゃ、お客さん来てくれないですよ。それに、麻呂も始めですね、例えば原作はイギリスですけど、無知蒙昧でして、他国の文化とか文明…文化に対してね、僕らの若い時に比べてはるかに憧れも好奇心もないんですよ。知っているのは自分の生活圏のことだけ!」
「自分たちで映画を作る土俵を狭くしている。SFの中なら作れる、SFの船の中なら作れるって、そりゃそういう映画いっぱい観たからです。『ブレードランナー』風に東京の町を見ることならできるって、そりゃそういう映画を観たからです。最初のトップバッターにならなきゃいけないのに…。そういうことに関しては非常に、努力が足りないと思いますね。」
「床下の小人たち(の舞台)を日本に持ってきたってのは、まだその方が作りやすかろうと。何も知らないんだから、突然にイギリスに1ヶ月くらいロケハン行ったって分かりゃしないからね。そんなことより自分の暮らしてきた生活を考えろってこう…見てないんですよ(笑)」
「自分たちで映画を作る土俵を狭くしている。SFの中なら作れる、SFの船の中なら作れるって、そりゃそういう映画いっぱい観たからです。『ブレードランナー』風に東京の町を見ることならできるって、そりゃそういう映画を観たからです。最初のトップバッターにならなきゃいけないのに…。そういうことに関しては非常に、努力が足りないと思いますね。」
「床下の小人たち(の舞台)を日本に持ってきたってのは、まだその方が作りやすかろうと。何も知らないんだから、突然にイギリスに1ヶ月くらいロケハン行ったって分かりゃしないからね。そんなことより自分の暮らしてきた生活を考えろってこう…見てないんですよ(笑)」
う~む厳しい(笑)
『思い出のマーニー』の舞台が北海道になったのも、こういう事情が考慮されたのかもしれませんね。ちなみに宮崎監督が冒頭で言っていたとおり、もともとアリエッティは宮崎・高畑両氏が20代の頃から温めてきた企画なのだそうです。
日本のアニメーション 現在・過去・未来
最後はタイトル通り、過去から続く『アニメーションの世界』が抱えている問題が展開されています。
これは2009年のインタビューですので、あるいはアニメーション界を取り巻く状況も変わっているかもしれません。ですが、現在のアニメーションのみならず“創作する”という行為全体にも通じる点が多い話だったのではないでしょうか?
あくまで外側からアニメーションを愛する人間としては、ただただアニメーションに携わる人達を応援するばかりです。
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