今回は、書籍『「もののけ姫」はこうして生まれた。』より、『もののけ姫』のアフレコ中に分かった裏話をご紹介したいと思います。
勘違いしている人が多い?カヤとアシタカの関係
ナゴの守から受けた呪いにより、村にいることができなくなったアシタカ。村を出て行く朝、見送りに来てはならぬはずのカヤが、最後の別れの言葉を掛けに現れるシーン。
このカヤの声、サンの声を演じた石田ゆり子さんが兼任しているのですが、このシーンで石田ゆり子さんは“ある勘違い”をしていました。同じ勘違いをされている方もいるのではないでしょうか?カヤはアシタカのことを「兄さま」と呼んでいるのですが…
二人の演技、今生の別れにしては、情感が足りなかった。「兄さま」に引きづられて、兄と妹の別れだと、誤解しているせいかもしれなかった。
(※注:宮崎監督の言葉)「あの、カヤはですねえ、カヤはアシタカの嫁さんになるつもりだったんですよ。そういう風に周りが認めた娘なんです。兄さまって言ってるけど、こういう小さな村では、自分より年上の人間達はみんな兄さまや姉さまなんですよね。
(中略)
アシタカは村を追われてるんですね。マゲを切ってるでしょ。あれはこの村では、もう人間ではなくなることを表してるんです。ソフトになってますけど、だから、誰も見送らないんです。密やかに村を出て行かなきゃいけないんです。つまり、二度と会えないだろうっていう。自分が慕っている兄さまを、しかも自分の命を助けてくれた、救ったために呪いを受けて村を出ていく、そのアシタカをね、だから感極まって、気持ちはもうあふれてるはずなの」
案の定、妹だと思っていた石田さんは、「あーっ」と目を丸くして聞いていた。
「カヤの気持ちを察して、今度はアシタカの方は、その気持ちに、ただ反応するんじゃなくて、むしろ明るく自分の運命を見極めよう、自分は出かけて行くんだってことで、『私はいつもカヤを思おう』とハッキリ男らしく言ってあげないと、未練が残って言うと、カヤはつらくて堪んないですね。アシタカは映画が終わる時に、この村に戻りませんから。永久の別れになることを覚悟して行くんで。その気持を…」
この指摘後、兄妹から恋人へ、トーンが変わって、求めるものにグンと近づいた。
(※注:宮崎監督の言葉)「あの、カヤはですねえ、カヤはアシタカの嫁さんになるつもりだったんですよ。そういう風に周りが認めた娘なんです。兄さまって言ってるけど、こういう小さな村では、自分より年上の人間達はみんな兄さまや姉さまなんですよね。
(中略)
アシタカは村を追われてるんですね。マゲを切ってるでしょ。あれはこの村では、もう人間ではなくなることを表してるんです。ソフトになってますけど、だから、誰も見送らないんです。密やかに村を出て行かなきゃいけないんです。つまり、二度と会えないだろうっていう。自分が慕っている兄さまを、しかも自分の命を助けてくれた、救ったために呪いを受けて村を出ていく、そのアシタカをね、だから感極まって、気持ちはもうあふれてるはずなの」
案の定、妹だと思っていた石田さんは、「あーっ」と目を丸くして聞いていた。
「カヤの気持ちを察して、今度はアシタカの方は、その気持ちに、ただ反応するんじゃなくて、むしろ明るく自分の運命を見極めよう、自分は出かけて行くんだってことで、『私はいつもカヤを思おう』とハッキリ男らしく言ってあげないと、未練が残って言うと、カヤはつらくて堪んないですね。アシタカは映画が終わる時に、この村に戻りませんから。永久の別れになることを覚悟して行くんで。その気持を…」
この指摘後、兄妹から恋人へ、トーンが変わって、求めるものにグンと近づいた。
しかし、それでもこのシーンは難しかったようで、この後何テイクも繰り返したそうです。
モロと乙事主、実は過去に…
次は、モロを演じた美輪明宏さんのアフレコ中に発覚した意外な事実。
五百歳の猪神、乙事主と三百歳の犬神モロとの再会場面。作者だけしか知らない、乙事主とモロの関係が明らかにされた。(中略)「これなんだけどね、あのね、乙事主とモロは、昔、いい仲だっていう、百年前に別れたと思って」
(中略)
美輪「あっ、それがあったの?猪と犬が。アハハハ……あ、そう、面白いけどね。あナルホド、それがあるのね」
その科白(セリフ)は「一度にケリをつけようなどと、フン、人間の思うつぼだ」というもの。指摘の前は、ただ威圧的で軽蔑的だった科白のニュアンスが、指摘後は明らかに変わった。「フン」以降の科白が裏声的になり、優しさを含んでいた。その科白に集中していた宮崎さん、聞き終わるや、満面に笑みを浮かべて、若林さんに告げた。「女になったね」と。
(中略)
美輪「あっ、それがあったの?猪と犬が。アハハハ……あ、そう、面白いけどね。あナルホド、それがあるのね」
その科白(セリフ)は「一度にケリをつけようなどと、フン、人間の思うつぼだ」というもの。指摘の前は、ただ威圧的で軽蔑的だった科白のニュアンスが、指摘後は明らかに変わった。「フン」以降の科白が裏声的になり、優しさを含んでいた。その科白に集中していた宮崎さん、聞き終わるや、満面に笑みを浮かべて、若林さんに告げた。「女になったね」と。
宮崎監督、この後も「モロと乙事主は昔の恋人」という話を美輪さんとしています。今度は、タタリ神となった乙事主に捕らわれたサンを救うため、瀕死のモロが対峙するシーン。
(前省略)
美輪さん、身につまされるように言った。「悲しい話ね。もう私もこの年になると、昔のボーイフレンドがね、もう本当にこんなに成り果ててと思う人、随分会うのね。向こうもそう思ってるのかもしれないけど(笑)本当に朽ち果てた人に会うの」
その流れの中でモロの「私の娘を返せ」という科白がある。そのニュアンス説明が長かった。
「複雑すぎて言葉にするの難しいですね。…馬鹿な争いを乙事主をやったわけですよね。煩悩が残ってる、妄念が残ってるために、タタリ神になっちゃったワケで。あの、自分はタタリ神には絶対ならない。あの女を噛み砕くために、その怨霊になっても噛み砕こうと思ってるんだけど、(中略)そういう、昔はちょっといい仲だった、あの頃はもっと立派な猪だったのにね、何よこの人はって、勝手にぼけちゃって、言葉までなくしてね」熱心すぎる恋人説の繰り返しに、、美輪さん絶妙なつっこみを入れる。「過去にやられましたね(笑)」
宮崎「いや、そりゃあ(笑)。…だから、あんまり、こう込めないで、私の娘を返せってやった方がいいと思うんです」
美輪「あんまりだから、いろんなものを二重三重四重構造にしちゃうと、結局最後に残るのは、透明にシンプルになっちゃうんですよね。(後略)」
美輪さん、身につまされるように言った。「悲しい話ね。もう私もこの年になると、昔のボーイフレンドがね、もう本当にこんなに成り果ててと思う人、随分会うのね。向こうもそう思ってるのかもしれないけど(笑)本当に朽ち果てた人に会うの」
その流れの中でモロの「私の娘を返せ」という科白がある。そのニュアンス説明が長かった。
「複雑すぎて言葉にするの難しいですね。…馬鹿な争いを乙事主をやったわけですよね。煩悩が残ってる、妄念が残ってるために、タタリ神になっちゃったワケで。あの、自分はタタリ神には絶対ならない。あの女を噛み砕くために、その怨霊になっても噛み砕こうと思ってるんだけど、(中略)そういう、昔はちょっといい仲だった、あの頃はもっと立派な猪だったのにね、何よこの人はって、勝手にぼけちゃって、言葉までなくしてね」熱心すぎる恋人説の繰り返しに、、美輪さん絶妙なつっこみを入れる。「過去にやられましたね(笑)」
宮崎「いや、そりゃあ(笑)。…だから、あんまり、こう込めないで、私の娘を返せってやった方がいいと思うんです」
美輪「あんまりだから、いろんなものを二重三重四重構造にしちゃうと、結局最後に残るのは、透明にシンプルになっちゃうんですよね。(後略)」
ちなみに甲六を演じた西村雅彦さんはかなりアドリブも上手で、アフレコでは優等生だったそうです。
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