今回は『ハウルの動く城』の、映画を観ているだけでは分からない裏設定や雑学・豆知識を、書籍『ロマンアルバム ハウルの動く城』から抜粋してご紹介したいと思います。
※基本的に用語は五十音順ですが、一部見やすさを考慮して、順序を入れ替えております。また、文章も一部編集・省略してあります。
アルザス地方
「ヨーロッパの空気感を出したい」という宮崎監督の言葉を受け、制作に入る前に、作画、美術のメインスタッフはヨーロッパに取材旅行に出かけることになった。そのメインとなった行き先がフランスのアルザス地方。荒地の魔女
元は王室付きの魔法使いだったが、悪魔と契約したことでその座を追われ、荒地に追放されたことから、そう呼ばれるようになった。人々に名を知られ、恐れられている。うまし糧を
ハウルの家の「いただきます」。ソフィーたちの世界では一般的な言い方なのかもしれない。お爺さん
マルクルにまじないを頼みにくるお爺さん。だが、あいにく城の掃除中で後回しに。ソフィーたちが朝市に向かう際に挨拶をしていたのも、このお爺さんだ。オタマ人
サリマンの配下である王室側の魔法使いが変身した姿。おたまじゃくしとトンボとトカゲを混ぜたようなものだから、絵コンテ上では「オタマ人」もしくは「オタマン」という通称を与えられている。ゴム人間
ハウルたちの世界の魔法使いが一般的に用いる使い魔。ゴムのように伸縮自在で、分裂、合体によって体の大小を変えることも可能だ。普段はコンパクトに持ち運べるようで、荒地の魔女は、小型のティーポットくらいの大きさの金属のツボに、ゴム人間をしまっていた。なぜかみんな愛嬌のあるシルクハットを被っている。カブ
映画では終始、愛嬌のある存在だったが、実は原作では恐いイメージを持つキャラクター。原作のソフィーは、カカシの来訪をひどく怖がっている。キングズベリー
ジェンキンス
ハウルの仮名の一つ。港町に店を開いている魔法使い。町の人のためにまじないの粉を処方したりと、庶民的な存在。ペンドラゴン
ハウルの仮名の一つ。キングズベリーに住む魔法使い。ジェンキンスよりも偉そうな響きで、かのアーサー王と同名である。城(動く城)
原作では空に浮かんでいた城が、宮崎監督のアイディアにより、歩く城となった。城の足については、6本とか8本という案も出たが、デジタル作画監督の片塰さんが4本足で城を試作し、そこに落ち着いたということだ。いろいろなパーツの寄せ集めで出来ていて、宮崎監督いわく「張りぼて」の城。大砲はついているが、どうやら見かけ倒しらしい。ハッター帽子店
もともとはソフィーの父親の店だった帽子店。父親は死に、母親のハニーが経営を継いだが、ハニーは若い男と付き合って店に出ないことが多く、かつて繁盛していた店は、どんどん傾いていった。ソフィーは長女として、父の残した店をなんとか変えようとしていた。引っ越しによってハウルの家になったということは、ソフィーがいなくなった後、店はなくなってしまったということだろう。花畑
引っ越しの後、新しくピンクのドアから行けるようになった花畑。魔法使いだったハウルの叔父が残してくれたという花畑の中の小屋は、ハウルが子供時代の夏に、ひとりで過ごした思い出の場所。つまり、自分の過去を積極的にソフィーに見せているわけで、告白しているも同然の行為なのだ。「ここの花を摘んでさ、花屋さんをあの店でできないかな」という言葉は、まるでプロポーズ?だが、ソフィーは美青年ハウルの、自分への恋心が信じ切れず、年齢をころころ変えて戸惑うのだった。花屋
そしてハウルの言葉どおり、その後ソフィーたちはハッター帽子店があった空き店舗を使って花屋を営んでいた様子。マルクルは爺さん姿で花の配達に出かけている。葉巻
ハニー・ハッター
ソフィーの母親。派手好きな女性で、物語冒頭では、若い恋人とキングズベリーへ買い物に行っていて不在だった。ソフィーがハウルの城で暮らし始めた後、店をたたんで、どこかの金持ちと再婚する。物語後半、ソフィーを訪ねて、元ハッター帽子店に戻ってくるが、それはサリマンに命令されてやったこと。娘をトラブルに巻き込むのを承知で、サリマンが託した巾着を、ハウルの家に置き忘れてきた。死んだ父親はどうだったか分からないが、ハッター家の女性たちは自分たちが家族であるという感覚が希薄なように見える。レティー・ハッター
チェザーリの店のチョコレート売り場で働く、ソフィーの妹。明るく器量よしで、町の男たちのアイドル。つまり、ソフィーとは正反対の女性である。チェザーリの店
町の中心部にあって、ソフィーの妹・レティーが働くお菓子店&カフェ。レティーの担当するチョコレート売り場は、彼女のファンの男性たちで常にいっぱいだ。メモ
チェザーリの店に行く時に、ソフィーが持っていた紙片。おそらく、チェザーリの店の所在が記してあったのだろう。ということは、ソフィーがレティーの仕事場を訪ねるのは、これが初めてということになる。姉妹はどれほどの月日を、離れたままで暮らしてきたのだろう?ベッシー
ハッター帽子店の店員。お針子の女の子たちを管理するマネージャーのような存在か?お針子
ハッター帽子店で働く女性たち。仕事よりも遊びに夢中な、軽いタイプが集まっているようだ。主人のハニーからして、店の経営にあまり興味がない様子なので、無理からぬことなのかもしれない。マーサ
ソフィーの町の南町に住むという女性。ベッシーたちの噂では「ハウルに心臓を取られた」ことにされていた。町の人たちの間では、ハウルは美人しか狙わないことになっているので、さぞかし美人だったのだろう。末の妹
羊飼いに、中折れ谷に住む末の妹のところへ行くと説明して、荒地に入っていったソフィー。映画には登場せず、名前すら与えられなかったが、原作ではソフィーとレティーにはマーサという妹がいる。ハウルに心臓を取られたという噂の美人とは別人か?マッジ
港町に住む少女。父親の漁がうまくいくためのまじないを頼みに、ジェンキンス(ハウル)のところに通っている。ソフィーを見て、魔女と勘違いする。ハウルの叔父
やはり魔法使いだったらしい。おそらくハウルのはこの叔父の影響で魔法使いを目指したのではないだろうか。彼はハウルに秘密の庭と水車小屋を残して、この世を去った。フライングカヤック
2枚の羽で、まるで虫のように空を飛ぶカヤック。庶民一般に使用されている乗り物ではなく、国の上層部と軍だけが使用しているようだ。ソフィーが最初に王宮に乗り込んだ時、敷地内では、空軍の士官が、家族や恋人たちにフライングカヤックの体験飛行をさせていた。魔王
ハウルが怪物への変身の魔法を繰り返すことにより、いつしか心が身体に蝕まれて、完全な怪物になってしまうことを指す。最後には、その一歩手前まで状況は進行していた。町の灯り
ソフィーたちの国の街灯や室内の灯りは基本的にガス灯のようで、それに明かりを点す人の姿も、作中で描かれている。しかし戦争が激化すると、灯火管制が敷かれ、街は暗闇に包まれることに。町の灯は平和の象徴なのだ。一方、電灯の技術もごく一部で使われていることが、荒地の魔女がサリマンの罠にはまったシーンで分かる。おそらく電灯は高価で、また発電が必要であることから、一般には広まっていないのだろう。ロビダ
『ハウルの動く城』の世界観のモチーフの一つとなっているのが、19世紀から20世紀初頭にかけて活動したフランスの画家、アルベール・ロビダの作品群。もともとは三鷹の森ジブリ美術館で上映された短編『空想の空飛ぶ機械達』にロビダの絵が引用されており、それと似た世界観が『ハウル』にも使われることとなった。いかがでしたでしょうか?これを読んだことにより、『ハウルの動く城』がより面白くなるのではないでしょうか?特にソフィーの家族関係、なんだか淡白で寂しい関係ですよね…。個人的オススメは最後の「ロビダ」です。彼の絵は必見!いずれこのブログでご紹介したいと思います。
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