ジブリの絵コンテから分かること。今回は『魔女の宅急便』から。
スランプに陥り、ジジの言葉も分からなくなり、飛ぶこともできなくなったキキ。そんな時に訪ねてきた画学生のウルスラ(作中で名前が呼ばれることはない)とともに、彼女のログハウスへ。ウルスラの描いた大きな絵に見とれていると、「絵のモデルになって欲しい」と言われ、戸惑う。しかし「あなたの顔イイよ!この前よりずっと良い顔してる。」と言われ、モデルを務めることに。
このシーンでウルスラが描いていたキキの顔がこれ。写実的というか、なんというか。
実はこの絵、絵コンテでは以下のような説明がされていました。
ウルスラの手が似ても似つかぬ諸星大二郎風のキキをかいてる
諸星大二郎風!
言われてみれば、コレ確かに諸星大二郎先生を彷彿とさせるタッチです。たびたび「宮崎駿は諸星大二郎のマンガが好き」という話を聞きます(本人も言っています)が、それがこんなところに現れているとは。
しかし「似ても似つかぬ」とわざわざ書いてあるのが…ウルスラの絵を見た時の違和感が取れました(笑)似せるつもりのない、ウルスラのアーティスト性を表現したのでしょうね。
ウルスラの年齢
ちなみに…このウルスラ、彼女の年齢は18才ですが、宮崎監督は当初27才にしようと思っていたそうです。しかし鈴木敏夫プロデューサーはキキと同い年がいいと主張し、長く話し合った結果、間を取って18才にしたそうです。
ウルスラが描いていた絵について
この絵は実在する版画がモデルであり(八戸市立湊中学校養護学級の生徒たちが、坂本小九郎氏の指導を受けて制作した版画作品)、これを見た宮崎駿監督が気に入り、背景を担当した男鹿和雄氏が加筆・アレンジしたものが映画に使用された…というのはジブリファンの間ではやや有名な話ですが、
※こちらが元になった作品『星空をペガサスと牛が飛んでいく』
(「虹の上をとぶ船」シリーズ)
ジブリの教科書5 魔女の宅急便 (文春ジブリ文庫) に収録されている、鈴木敏夫氏の制作秘話によると、この版画作品を制作した湊中学校養護学級は、宮崎駿監督の義父が教えていたこともあるクラスだったそうです。つまりこの版画作品が監督の目に留まる機会を得たのは、義父と学校の縁から、というわけですね。
ちなみにこの絵、ウルスラがどう完成させたのかエンディングで見せる予定があったそうですが、それだと時間がオーバーしてしまう事と、宮崎駿監督が絵に手を加える余力がなかったため、断念したそうです。
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