四方向に設置されたすべり台を上がる謎の映像…一体なぜ!?
…と、答えは40秒ほど経った後にアッサリ明かされます。しかしタネが分かった所でなお不思議なのが錯覚の面白い点。
この錯覚は「なんでも吸引四方向すべり台」と名付けられていて、「ベスト錯覚コンテスト世界大会(Best Illusion of the year Contest)」の、2010年優勝作品です。
製作したのは、杉原厚吉(すぎはら こうきち)さん。明治大学大学院先端数理科学研究科特任教授、明治大学大学院先端数理科学インスティテュート副所長、東京大学名誉教授をされていて、研究分野は数理工学だそうです。杉原さんは2013年にも「ベスト錯覚コンテスト世界大会」で優勝を果たしています。
■ご本人による「なんでも吸引四方向すべり台」の解説
「この作品の種明かしをすると、ある特定の場所から見ると、中央部と4つの斜面を支えている合計5本の柱がすべて、テーブルの面に対して垂直に見えるように作ってあるのです。すると、我々の脳は、最も長い柱が支えている中央部が最も高い場所にあると勝手に思い込んでしまうのですね。ところが実際には、確かに中央部を支えている柱は一番長いものの、斜めになっているのです。つまり、柱の長さと高さは無関係というわけです」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/jagzy/20140204/259281/より
2013年の「ベスト錯覚コンテスト世界大会」優勝作品
次の動画は、「フットステップ錯視」に関する作品で、こちらは2013年の「ベスト錯覚コンテスト世界大会」優勝作品です。(※フットステップ錯視とは、濃い灰色と薄い灰色の縞模様の背景の上を黒色と白色の2つの長方形が同時に同じ速さで動いている時、2つの長方形があたかも交互に動いているように見えてしまう現象のこと。)
こちらは、杉原さんが、小野隼氏(先端数理科学研究科博士前期課程2年)および同研究拠点の友枝明保氏(明治大学研究・知財戦略機構特任講師)と共同で制作したもの。
なぜ人はこのような錯視が見えてしまうのか?
杉原さんはこう仰っています。
「これは、平面画像から立体を読み取る脳の機能が、理性の及ばない場所にあることを意味しています。目から入ってくる情報量は大変多く、脳はそれを一瞬のうちに処理しなければなりません。そこで脳は、大量の情報の中から重要だと思われるもののみを瞬時に抽出しようとします。しかしながら、重要な情報を正しくより分けるのは非常に難しいこと。それが錯視の原因になっているのではないかと思われます」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/jagzy/20140204/259281/?P=2より
杉原さんは自分のプロジェクトを「計算錯覚学」と命名し、独自の学問分野として確立しようとしているそうです。錯視はこれまで、心理学や認知科学の分野で研究されることが多かったそうで、実際、「計算錯覚学の構築」プロジェクトのメンバー、杉原氏を含め8人のうち3人は、心理学者と認知科学者で占めているとの事。しかし、同プロジェクトのユニークな点は、数学を使って錯視の正体をひも解こうとしていることにあるそうです。
杉原さん曰く、「数学を使って錯視を捉えることのメリットは、錯視の強さを数値で表すことができる点にあります。条件を変えることで、錯視の度合いがどれだけ増減するかを計算によって導き出すことができるので、錯視をコントロールできるのです。それにより、実社会へのさまざまな応用が可能になると考えています。それが我々の研究拠点のコンセプトであり、プロジェクトの目的です」
そしてその応用例の1つが、交通事故の低減と渋滞の緩和だといいます。知的好奇心がギュンギュンくすぐられますねえ~。
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