書籍『「もののけ姫」はこうして生まれた』にて、宮崎監督は「もののけ姫のラストシーンに出てくるコダマは、後にトトロに変化する」ということをほのめかしていました。何千年も生きているはずのトトロが、シシ神の森に一体も居ないことを気にしての発言だったようです。
「俺、気に病んでることが一つあるんですよ。トトロは何千年も生きてるというのに、トトロが出てないじゃない、この森に。本当はトトロが一杯いるんじゃないかって(笑)。気に病んでるんです。実は」(144P)
「で、これはもう、二木さんのたっての希望で、(※補足:おそらく原画を担当した二木真希子さんのことだと思われる)チビで一匹でいいから、コダマがノコノコ歩いてるやつ、最後にいれてくれって。それがトトロに変化したって(笑)。耳が生えてたっていうの、どうですかね。そうすると首尾一貫するんだけど」(285~286P)
「で、これはもう、二木さんのたっての希望で、(※補足:おそらく原画を担当した二木真希子さんのことだと思われる)チビで一匹でいいから、コダマがノコノコ歩いてるやつ、最後にいれてくれって。それがトトロに変化したって(笑)。耳が生えてたっていうの、どうですかね。そうすると首尾一貫するんだけど」(285~286P)
書籍『「もののけ姫」はこうして生まれた。』より
これは新たに生まれたコダマ?それとも生き残ったコダマ?
というわけで、少なくとも、『もののけ姫』に最後に登場するコダマは後にトトロになるようです。
ところで、ここでひとつ疑問があります。それは『もののけ姫』の最後に登場したコダマは『となりのトトロ』に登場したトトロになったのか?という点です。宮崎監督はそのようなことは言っていませんので、本当のところは分かりません。ですが、その可能性はあるのか、推測してみました。
①あのコダマは「たくさん居たトトロ」の一体にすぎない可能性が高い
書籍『ロマンアルバム・エクストラ となりのトトロ』にある「宮崎監督登場人物覚書」の設定によると、トトロは「人間と交渉を持つのを嫌い、あたりがさわがしくなると山奥へ移ってしまう。その為に、最近ではめっきり姿を減らしてしまった。」とあります。つまりトトロは昔はたくさん居たのです。宮崎監督がシシ神の森にトトロが居ないことを気にしていた理由もここにあります。
また、監督は先ほど引用した通り「本当はトトロが一杯いるんじゃないかって(笑)。」と言っています。
ということは、もののけ姫の最後に出てきたコダマは「たくさんいたトトロの一体」になるにすぎず、『となりのトトロ』に出てきたトトロとは別のトトロである可能性の方が高いのです。
では、このコダマが『となりのトトロ』に登場するトトロになる可能性はあるのでしょうか?ここでひとつ重要となるのは『となりのトトロ』に登場する大トトロの年齢です。例によって設定が固まる前のイメージボードがネットで安易に拡散しているため、勘違いしている方が多いのですが、『となりのトトロ』に登場する大トトロは宮崎監督によると「3000年生きている」そうです。
またロマンアルバムでの他の記述によると、「この国にほとんど人がいなかったころから棲んでいる生き物」とあります。(アニメ絵本には1300才くらいと書いてありますが、これは誤りだと思われます。)
そして、『もののけ姫』の舞台となっているのは室町時代(1336年あるいは1338年~1573年)です。つまり、『となりのトトロ』に登場した大トトロが3000年生きていて、かつ『もののけ姫』の最後に出てきたコダマがあのラストの時点で生まれたとするならば、大トトロは最低でも西暦4300年より後に生まれていなければなりません。しかしもちろんそんなはずはなく、『となりのトトロ』の時代設定は昭和30年代です(実は宮崎監督はもっと昔の時代を想定しているそうですが、ここでは基本的な設定とされている昭和30年代としておきます)。よって「大トトロは3000年生きている」という言葉との整合性を付けるならば、最後に出てきたコダマの年齢は2372~2618才だったことになります。このコダマとして生きた年齢を大トトロの年齢に含めるならば、最後に出てきたコダマが『となりのトトロ』の大トトロになった可能性はあります。
ということは、もののけ姫の最後に出てきたコダマは「たくさんいたトトロの一体」になるにすぎず、『となりのトトロ』に出てきたトトロとは別のトトロである可能性の方が高いのです。
②最後に出てきたコダマが2372~2618才くらいだったならあり得る?
では、このコダマが『となりのトトロ』に登場するトトロになる可能性はあるのでしょうか?ここでひとつ重要となるのは『となりのトトロ』に登場する大トトロの年齢です。例によって設定が固まる前のイメージボードがネットで安易に拡散しているため、勘違いしている方が多いのですが、『となりのトトロ』に登場する大トトロは宮崎監督によると「3000年生きている」そうです。
またロマンアルバムでの他の記述によると、「この国にほとんど人がいなかったころから棲んでいる生き物」とあります。(アニメ絵本には1300才くらいと書いてありますが、これは誤りだと思われます。)
そして、『もののけ姫』の舞台となっているのは室町時代(1336年あるいは1338年~1573年)です。つまり、『となりのトトロ』に登場した大トトロが3000年生きていて、かつ『もののけ姫』の最後に出てきたコダマがあのラストの時点で生まれたとするならば、大トトロは最低でも西暦4300年より後に生まれていなければなりません。しかしもちろんそんなはずはなく、『となりのトトロ』の時代設定は昭和30年代です(実は宮崎監督はもっと昔の時代を想定しているそうですが、ここでは基本的な設定とされている昭和30年代としておきます)。よって「大トトロは3000年生きている」という言葉との整合性を付けるならば、最後に出てきたコダマの年齢は2372~2618才だったことになります。このコダマとして生きた年齢を大トトロの年齢に含めるならば、最後に出てきたコダマが『となりのトトロ』の大トトロになった可能性はあります。
ですが、大トトロが3000年生きているという設定は、実はコダマだった頃の最低でも2300年に月日を加算していたというのは、かなり苦しい辻褄合わせではないでしょうか?
ひとくちに“トトロ”と言っても、少なくとも『となりのトトロ』には3体のトトロが出てきます。ですからあのコダマは何も大トトロになる必要はないわけです。最後のコダマが“新たに生まれたコダマ”とするならば、昭和30年代を舞台にした『となりのトトロ』の時点で約380~630才くらいになっていますので、年齢的に中トトロ・小トトロになった可能性もあります。
といったわけで、他にも可能性はあるかもしれませんが、『もののけ姫』のコダマ=『となりのトトロ』の大トトロという設定は、ちょっと無理があるのでは?という話でした。
③大トトロではなく、中トトロ・小トトロになったのかも?
ひとくちに“トトロ”と言っても、少なくとも『となりのトトロ』には3体のトトロが出てきます。ですからあのコダマは何も大トトロになる必要はないわけです。最後のコダマが“新たに生まれたコダマ”とするならば、昭和30年代を舞台にした『となりのトトロ』の時点で約380~630才くらいになっていますので、年齢的に中トトロ・小トトロになった可能性もあります。
といったわけで、他にも可能性はあるかもしれませんが、『もののけ姫』のコダマ=『となりのトトロ』の大トトロという設定は、ちょっと無理があるのでは?という話でした。