DVD、ブルーレイも発売・レンタルされ、既にご覧になった方も増えてきたであろう『かぐや姫の物語』。
クライマックスでは、広く知られている「かぐや姫」の展開通り、月から天人がかぐや姫を迎えにやってきます。このシーンが強く印象に残っている方は非常に多いのではないでしょうか?
その理由として、やはりこのシーンで流れている楽しげな曲があるといえるでしょう。天人のお迎えに対し抵抗する翁たちに対し、まるで悪意なく、しかし強引な力でかぐや姫を連れ帰ろうとする天人たち。
彼等にとっては祝福のお迎えゆえ、観ている私たちには容赦のない無慈悲に映るこの悲劇的なシーン。対して流れている音楽はあまりにも楽しげゆえ、より絶望感が引き立っていました。
(ここで流れていた曲『天神の音楽』はネットで検索すればおそらく見つかりますので、聴きたい方は検索してみてください。)
※以下のリンク先から『天人の音楽』ほか全曲が試聴できます。
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この楽観的で楽しげな『天人の音楽』、その明るさの秘密は「サンバ」でした。以下、『ロマンアルバムエクストラ かぐや姫の物語』から、高畑監督、久石譲氏へのインタビューより引用です。
―― 物語の最後、かぐや姫が天上に上がっていく曲はそれまでの流れと違っていて驚きました。
高畑「阿弥陀来迎図という阿弥陀さまがお迎えにきてくれる絵があります。平安時代以来、そういう絵がたくさん残っているんですけれど、その絵の中で楽器を奏しているんですね。ところが描かれている楽器は正倉院あたりにしかないような西域の楽器ばかりで、日本ではほとんど演奏されていない。だから絵を見ても当時の人には音が聴こえてこなかったと思います。でも、打楽器もいっぱい使っているし、天人たちはきっと、悩みのないリズムで愉快に、脳天気な音楽を鳴らしながら降りてくるはずだと。最初の発想はサンバでした。」
久石「サンバの話を聞いたときは衝撃的でした。『ああ、この映画はどこまで行くんだろう』と(笑)。でもおかげでスイッチが入っちゃいましたね。映画全体は西洋音楽、オーケストラをベースにしたものなんですけど、天人の音楽だけは選曲ミスと思われてもいいくらいに切り口を替えようと。ただ完全に分離させてしまうのもよくないので、考えた結果、ケルティック・ハープやアフリカの太鼓、南米の弦楽器チャランゴなどをシンプルなフレーズでどんどん入れるアイデアでした。却下されると思って持っていったのですが、高畑さんからは『いいですね』って。」
高畑「阿弥陀来迎図という阿弥陀さまがお迎えにきてくれる絵があります。平安時代以来、そういう絵がたくさん残っているんですけれど、その絵の中で楽器を奏しているんですね。ところが描かれている楽器は正倉院あたりにしかないような西域の楽器ばかりで、日本ではほとんど演奏されていない。だから絵を見ても当時の人には音が聴こえてこなかったと思います。でも、打楽器もいっぱい使っているし、天人たちはきっと、悩みのないリズムで愉快に、脳天気な音楽を鳴らしながら降りてくるはずだと。最初の発想はサンバでした。」
久石「サンバの話を聞いたときは衝撃的でした。『ああ、この映画はどこまで行くんだろう』と(笑)。でもおかげでスイッチが入っちゃいましたね。映画全体は西洋音楽、オーケストラをベースにしたものなんですけど、天人の音楽だけは選曲ミスと思われてもいいくらいに切り口を替えようと。ただ完全に分離させてしまうのもよくないので、考えた結果、ケルティック・ハープやアフリカの太鼓、南米の弦楽器チャランゴなどをシンプルなフレーズでどんどん入れるアイデアでした。却下されると思って持っていったのですが、高畑さんからは『いいですね』って。」
どうりであの曲だけ異彩を放っているはずです。高畑監督の采配が光っていたゆえに印象的なシーンに仕上がっていたというわけでした。
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