2013/11/12

「天空の城ラピュタの原作はガリバー旅行記」なのか?


情報が伝聞することの難しさ、言葉の難しさ、情報の根拠はどこにあるのか?を求める大切さ、がよく分かる問題です。



言わずと知れたジブリの傑作アニメ映画『天空の城ラピュタ』。

この作品に対して一部のネット界隈でよく聞かれる言葉があります。

“『天空の城ラピュタ』の元ネタor原作は、スウィフトの『ガリバー旅行記』である”

…何だか違和感のある言い回しです。確かに、スウィフトの『ガリバー旅行記』にはラピュタが登場しますし、『天空の城ラピュタ』の“ラピュタ”がここから取られていることは、作品内でパズーが発している言葉でもあり、間違いはありません。

ですが、「原作」という言葉は適切なのでしょうか?こう書いてあると、あたかも登場人物の誰かが、ストーリーの何処かが、ガリバー旅行記から拝借されたもの、もしくは、『天空の城ラピュタ』自体がガリバー旅行記からを着想を得た映画だと思えてしまいます。

しかし、スウィフトのガリバー旅行記には、パズーもシータもムスカもドーラの海賊一家も、ロボット兵も一切出てきませんし、飛行石もありません。(ガリバー旅行記のラピュタの動力は磁力であり、さほど高度にもありません)。住人は生きており、またその設定も大きく異なっています。物語の展開も全く別モノです。

では、何をもって「原作」「元ネタ」と言っているのか?
宮崎駿監督は、ガリバー旅行記から『天空の城ラピュタ』を着想したのか?


答えは、『ロマンアルバム 映画 天空の城ラピュタGUIDE BOOK』(徳間書店)に収録されている、宮崎駿監督へのインタビューにありました。以下、引用です。

宮崎『空中を舞台にして(映画を)やりたいなと思ったとき、たまさか、この昔読んだ「ガリヴァー」のことを思い出した。でも、「ラピュタ」という島の名前はすっかり忘れていて、空中魔城とかいろいろ島の名前を考えているときに、「ガリヴァー」じゃ何という島だったんだろうと、女房に電話して百科事典を調べてもらった。そしたら、「ラピュタ」という名前だった。これはまずいなと思ったんですよ、そのとき。読みにくいし、ピンとこない名前だと思ったから。でも、まあ、あるなら使っちゃえってことで(笑)
(中略)
インタビュアー「では、『ガリヴァー旅行記』を小さいころ読んで感激して、その結果が『天空の城ラピュタ』につながった、というわけではないんですね。」 
宮崎「ええ、そうじゃないんです。不思議な国へ行くという話は、マンガなんかにいっとき、たくさんありましたけど、「ガリヴァー」だけが印象に残っているというわけではないんです」

これとほぼ同じ話を『キネマ旬報』1986年8月号のインタビューでも語っていますが、その際には「ラピュタという名前だと聞いて、ガッカリしましてね。」とまで言っています。

また、自身の物語の作り方については、こう言っています。

「物語を作るときというのは、ネタ本があるというのではなく、子どものとき読んだものが色々いり混じって錯綜してモチーフになっているんですよ。そのモチーフには、子どものとき読んで非常におもしろかった話だけじゃなく、全然おもしろくなかったけど、なんか自分の中でひっかかっていたものとかの場合も、あるんですよね。「ガリヴァー」のラピュタはその例です。」

また、「空中の島の物語を作ろうと思われたきっかけは、いったい、何だったのですか?」と聞かれた際には、


▼テレコムにいたころ、「リトル・ニモ」のプロジェクト中に、空中の島や飛行船に乗った海賊のアイデアを練っていたが、自身がニモから離れたため、この時のアイデアを「天空の城ラピュタ」のネタとして後に使用した。(※リトル・ニモは、宮崎駿、高畑勲、メビウスなどが参加したアニメ映画。10年以上かけて1989年に公開されたが、興行的には失敗に終わった。宮崎氏は1981年にこの企画に参加したが、翌年降りていた。ちなみに高畑氏も同時期に参加し、同じく降りていた模様。)


▼「宝島」みたいな冒険モノを作りたくても、地上に宝はもう置けない(アイデアとしてマンネリだから?地上にもう夢はないから?)

▼以前、インドとの合作で「ラーマーヤナ」の企画があった際、その企画の中に、古代に空を飛んだり、核兵器を操ったりしていた、というアイデアがあったのを覚えていた


と述べており、こういったアイデアの蓄積が『天空の城ラピュタ』に結実した、
と語っています。

つまり、
宮崎駿監督は、ガリバー旅行記から『天空の城ラピュタ』を着想したわけではない。「空中の島」を舞台にした映画のアイデアが先にあり、後から“ラピュタ”というフレーズを拝借した。
というわけです。

ですから、「天空の城ラピュタの元ネタはスウィフトのガリバー旅行記」という言葉は非常に誤解を招く言い回しであると言えますし、「原作である」に至ってはほとんどデマに近いというわけです。



というわけで、ネットの伝聞を鵜呑みにせず、
自分で信頼できる資料を読むことがいかに大切か、
ということにも繋がる話でした。

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