2014/05/05

「成長しないのび太がおもしろい」宮崎駿と藤子不二雄の夢の対談!


アニメとマンガの二大(三大)巨匠、宮崎駿と藤子不二雄というビッグネームの対談が、『ロマンアルバム 映画 天空の城ラピュタ GUIDE BOOK』には収録されています。 

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映画天空の城ラピュタGUIDE BOOK復刻版(ロマンアルバム)宮崎駿,アニメージュ編集部

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83年当時の対談ですが、宮崎監督が藤本さんと『ドラえもんについて』、安孫子さんとは『悪役を描くこと』について語っている、とても面白い部分がありますので、そちらをご紹介したいと思います。

左から安孫子、宮崎、藤本のお三方

以下、その対談の抜粋です。
宮崎「きょうお目にかかったら、ぜひうかがおうと思っていたんですが、うちの息子が―― もう中学生になってしまいましたが ―― 『ドラえもん』の大ファンで、単行本をずっと買っていて、親のぼくも読んでいたんです。」
藤本「あー、どうも、ご迷惑をおかけしまして(笑)。」
宮崎「いえ(笑)。それで、のび太が成長していかないのがおもしろいと思ったわけです。たいへん貴重な体験を何度もしていくでしょう。タイムマシンに乗ったり。」
藤本「そうなんです。」
宮崎「それで、ふつう作者のほうが登場人物に思い入れしてしまって、その人物が成長して、ダメになるというか、マンガの主人公じゃなくなる場合が多いですよね。ところが、『ドラえもん』の場合、のび太が翌日また元に戻っている、という感じがね……。」
藤本「そこらへんが、作者としても多少苦しいんですよね。」

(中略)

藤本「『ドラえもん』の場合は、はっきり何年たっても変わらないタイプとして、はじめから作ってはいるんですがね。やっぱり、いろいろな体験、たいへんな体験が積み重なりながら、いっこうに進歩しないっていうのは、どうもね……。でも、ある意味ではね、ぼくらも似たようなことをやっているんじゃないかと思うんです。すばらしい文学を読んだり、映画を見て感動して、自分もこういう生き方をしたい、なんて燃え立ちますねえ。まあ、三日とつづきませんねえ(笑)、その感動は(笑)。」
宮崎「三日もつづけば立派です(笑)。」

(中略)

藤本「『ドラえもん』は十四年つづいていますが、はじめはぼくらも目ざめてなくて、ごく初期に描いた“恐竜もの”では単純に恐竜狩りに出かけるんですよ。それで、こんどは『のび太の恐竜』(昭和五十五年に劇場映画化された)で、恐竜狩りにくる連中とのび太たちが闘う話を書いたんです。そしたら『矛盾してるじゃないか』という投書がきましたよ(笑)。」
宮崎「(笑)。」

「のび太が成長していかないのがおもしろい」という発言のほか、藤本さん自身も“成長しないのび太”を心苦しく思っているのが興味深いですね。しかし、一方で「私たちだって映画などを観て感動をしても三日と続かないじゃないか」という耳が痛い風刺が入ります。もしかしたら、ドラえもんにはそいうメッセージも込められているのかもしれませんね(笑)

そして続きは以下のようになっております。
安孫子「SF映画なんかでも、昔は宇宙人はみんな外敵の対象だったけれども、最近は『未知との遭遇』(一九七六年、アメリカ映画、S・スピルバーグ監督作品)を見てもわかるように、宇宙人、E.T.と隣人としてつきあうような感じに変わってきましたものね。」
藤本「宮崎さんの『ナウシカ』も強力に、自然保護という立場から描かれていますよね。」
宮崎「いやー、なんか年をとったせいか、だんだんそういうものに関心が強くなりまして、田園に帰りたいなんていう気持ちのほうが強くなっているものですから(笑)。」
藤本「やっぱり無視できなくなってきているわけですねえ、時代の流れというものが。」
宮崎「活劇をやりたいと思ってやってきたんですけれども、悪役をつくることがだんだんむずかしくなってきましてね。ルーカスなんかでも、ダースベーダーを悪の権化にできなくて、結局おやじにしてしまったでしょう。構造をもった悪を描くということが、とてもむずかしくなってきた。いままで自分のひき出しのなかにあった悪役じゃ、ちょっとダメだなあ、とつくづく思いまして……。」
安孫子「宮崎さんとぼくらとで、そういう点でちょっと資質的に似てるなあと思うのは、悪を悪として単純に描ききれない、というところですね。なんか共通するものを感じる。」
宮崎「『ヒットラーおじさん』」というのは傑作だと思いましたね。あれはほんとに毒があった(笑)。」
安孫子「いやいや(笑)。ぼくらも毒のあるものは好きなんですが、どちらかというとユーモラスな感じのあるものがいい。じめじめした感じの毒なんかはダメですね。」
宮崎「ぼくもダメですね(笑)。そういうものを見たくないと思っているほうだから。」

(中略)

宮崎「『ドラえもん』のような、空き地に土管がころがっている風景なんて、いまはありませんからね。そういう、いまなくなってしまった世界を延々やっているところに『ドラえもん』のすばらしさがある、とぼくは思っているんですが(笑)。」
安孫子「もはやユートピアの世界ですね(笑)。」
藤本「そういう世界に、夢があると思わなきゃしょうがないですな(笑)。」
宮崎「ユートピアですね(笑)でも土管のなくなったあとの風景をやっぱり描いていかないといけないと思うんですけどね。」
藤本「空想の話を見てもらおうとするなら、やっぱり空想のまわりのディテールをしっかり描かなきゃいけない。」
宮崎「そうですね。」
藤本「そうでないと絵空事になってしまいますから。」
宮崎「ええ。それはものすごく感じますね。」


近年の感覚だと錯誤されがちですが、「単純な悪、権力的な悪を描くことの難しさ」が既に80年代前半で大御所の口から語られているのは非常に興味深いと思います。おそらく、この萌芽はもっと遡って、70年代には既にあったのではないでしょうか。そして宮崎監督、安孫子さん作の「『ヒットラーおじさん』(※ひっとらぁ伯父サン)が傑作」とするところが、いかにも監督らしい気がしました(笑)

ちなみに藤本、安孫子両氏も宮崎アニメのファンであり、コミック版ナウシカも読んでいたそうです。対談では、他にもナウシカに登場するメカニックについてや、オバQやドラえもんの“飛ぶ”表現についてなども語られていて、大変面白い内容となっています。興味を持たれた方は、是非とも手にとって見てください。

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