2014/07/03

絵本版『もののけ姫』と映画版『もののけ姫』がまったく違う理由


以前の投稿【映画版と全然違う!絵本版『もののけ姫』】では、絵本版『もののけ姫』(元々は1980年にテレビのスペシャル番組用に企画された作品であり、そのストーリーボードが後に絵本化された)の内容をご紹介しました。

絵本版(ストーリーボード版)

映画版
https://kinro.jointv.jp/ より


同じ『もののけ姫』ではあるものの、絵本版(1980年のTV企画用)『もののけ姫』と、映画版『もののけ姫』はまったく違う設定・ストーリーです。この変化には何があったのでしょうか?


書籍『風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡』に収録されている宮崎監督へのインタビューによると、以下の様な経緯があったようです。

―― それで、これは『もののけ姫』っていうタイトルですが、主人公はもののけ姫ではなくて、ある意味でアシタカが主人公ですよね。これは、当初から少年だったんですか?

宮崎「『もののけ姫』って言うタイトルで、『美女と野獣』を下敷きにしたまったく別のストーリーボードがあったんですよ。」

(中略)

「それで本にしたりもしてるんですが。鈴木プロデューサーが映画に入るとき絵本にしておけば便利だろうからってね。なんとかして追い込みたがるんですね」

(中略)

――で、少年というのは、当初から少年でいこうということだったんですね。

宮崎「そうですね。少年でいこうと。元々、その『もののけ姫』っていうストーリーボードは、大山猫と、その嫁に出されてしまう三の姫っていう――三番目のお姫様っていう意味です。そこから今回の“サン”をとったんですけど――全然違う話だったんです。この方が魅力があったときもあったんですけど、自然と人の関わりっていうものを考えていくと、その作品を今作るのはちょっと違うなと。それから、そこでの侍の描き方がやっぱり黒澤明的だなと思ってね。あの時代的な階級史観とか、そういうものの中でできた典型的パターンにそのままひきずられているという。そんな単純なものじゃないという日本の歴史がわかってきているのに、ある時期リアリティがあったからといってその図式そのまま、そこから抜け出せないというのはね、ダメなんじゃないかと思ってね。」
※ロマンアルバムでのインタビューによると、宮崎監督は決して黒沢作品や『七人の侍』が嫌いなわけではなく、むしろ「とても好き」だそうです。だからこそ「同じものを作るんじゃしょうがない」とのこと。


美女と野獣、黒澤明。確かに当初の『もののけ姫』のおおまかな設定は、『美女と野獣』や黒澤映画と共通しているところが多いです。しかし、上記の理由でこの物語を使用するのは止めてしまいます。当然ながらこの変化は容易ではなく、書籍『「もののけ姫」はこうして生まれた。』によれば、

『主人公を変えても、結局「父にうとまれ、もっとも卑しい醜い者に嫁にやられる娘」という基本設定が亡霊のように忍び込んできて、堂々巡りになってしまうと嘆いているのである。』

『宮崎さんは後にこう語った。「刀下げてチョンマゲ結ってる男を、主人公にしただけで、もうやりたくないですね。何にも新しいものを付与できないんじゃないかって感じが、自分にはあって。じゃあ、侍に虐げられている百姓を主人公にするってのはね、百八十度ひっくり返しただけで、極右と極左の違いみたいなもんで、どうって違わない。じゃあ、何が作れるのかって、こりゃあ本当に分からない」』

と悩んでいたそうです。

それでも宮崎監督は、「日本を舞台にした製鉄集団の物語を作りたい」という案、監督が「やりたくて溜めてきた素材」3~4つを組み合わせ、ストーリーを作らずに書き始めるなどの試行錯誤を行い製作し続けたそうです。

これが当初の『もののけ姫』とはまったく違う映画版『もののけ姫』になった理由と思われます。

この大幅な変化のためか、タイトルに関しても監督は途中から「アシタカセッキ」に変えたかったそうですが、鈴木プロデューサーの判断により(タイトルに“の”が入っているほうが良いという法則)、そのまま宮崎監督の了解を得ず『もののけ姫』で通したそうです(笑)

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