『風の谷のナウシカ』には、宮崎監督がこの作品のために描いたすべての水彩画を監督のコメント付きで紹介している『風の谷のナウシカ 宮崎駿 水彩画集』という画集が存在します。しかし、この画集に付いている宮崎監督のコメントがあまりにも正直なので、それが逆に面白いのです。今回は、そちらを一部ご紹介したいと思います。
例えばこの絵。ナウシカとテトが描かれています。何でもない良い絵だと思うのですが、監督いわく…
描いた自分がいうのも変ですが、この絵はあまり好きではありません。
僕の中にあるナウシカは、こんなポーズは絶対にとらないんです。
え…そ、そうなんですか?そうですか…。
次はこちらの絵。こちらもナウシカとテトが描かれているのですが、こちらのコメントはというと…
いつ描いたのかも、まったく記憶にない絵です。
…うん、たくさん絵がありますものね…忘れてしまうこともありますよね…。
お、こちらの絵は素晴らしいです!コミック版ナウシカの6巻に収録されていた絵です。巨神兵オーマの手に乗るナウシカ、不気味さと神秘性が融合した名画ではないでしょうか?宮崎監督は何と言っているのでしょうか?
ナウシカがこんなポーズをとることはあり得ないと思いながら描いたものです。
…ええ…で、でも、言われてみれば、オーマの手の上に乗りながらこんな安らかな表情を浮かべているナウシカって不自然ですよね、そうですよね。うん…。
こちらは腐海周辺全図です。この地図へのコメントはというと「この設定イラストは、連載の途中で国の位置関係や『風の谷のナウシカ』の舞台となる世界のつじつまを合わせるために描いたものです。」
いちいち正直過ぎる!
宮崎監督の正直すぎるコメントはこれだけではなく、他にも、
「描きたくなくてジタバタ抵抗した」
「よく覚えていない」
「無理やり描かされたという思いがある」
「ストーリーとまったく関係のない絵を描くのは大変でした。」
「とにかく僕は表紙の絵を描くのが嫌いだったんです。」
「また表紙の絵か……とかブツブツ言いながら描いた記憶があります(笑)。」
などなど、それはもう正直にコメントされていて、逆に読んでいるこちらが「ここまでハッキリ言っちゃって良いのだろうか?」と心配になってくるレベルなのです。
もちろんちゃんと「好きだ」と言っている絵もあります。例えばこちらの絵は「ものすごく好きな絵の一枚」だそうです。
そんな正直すぎるコメントと、たくさんの美麗な水彩画の対比が面白いこの画集。ナウシカ誕生に至るまでの原型となる絵や経緯なども載っており、必見の価値ありの豊富な一冊です。
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