『平成狸合戦ぽんぽこ』に登場する肝っ玉婆さんタヌキ、おろく婆。
「気晴らしじゃ、気晴らしじゃ!」
声を演じられたのは喜劇女優の清川虹子さんです。清川さんはすでに亡くなられていますが、当時の清川さんがこの作品にかけた思いは大変なものでした。書籍「ジブリの教科書8 総天然色漫画映画 『平成狸合戦ぽんぽこ』」に収録されている当時のコメントによると、こうあります。
出演の依頼を頂いた時、ちょうど肝硬変の手術を終えたばかりでね、最初お断りしたんですよ。一時は葬式を用意するほどの大病でしたから。ところが、監督さんが「車椅子でもいいからどうしても出てほしい」と言ってくださいましてね。ああ、こんなになってもまだ私を必要としてくれる監督が、作品があるなら頑張らなきゃ。そう思ってその日から車椅子を捨ててリハビリに励んだんです。結局九日で病院を出ちゃいましたよ。
プレスコ当日は歌のシーンも多いし、声が出るか心配だったけど、自分のためにも最高の演技をと思って力を入れました。いままでの芸歴のなかで一番大変なお仕事だったけど、それ以来、女優として復帰できました。この作品は命の恩人です。
プレスコ当日は歌のシーンも多いし、声が出るか心配だったけど、自分のためにも最高の演技をと思って力を入れました。いままでの芸歴のなかで一番大変なお仕事だったけど、それ以来、女優として復帰できました。この作品は命の恩人です。
そう、清川さんは大病を患い、体調の思わしくなかった状態にもかかわらず、高畑監督の熱意に突き動かされ、リハビリに励み、この作品の声優へ参加していたのでした。清川さんも高畑監督も並々ならぬ情熱です。
また、ぽんぽこの絵コンテ集に添付されている小冊子に収録されている作品論(著:おかだえみこさん)によると、こうあります。
「(前省略)私はこの映画のおかげで立ち直れました。この映画は私に命をくれたのです。長い芸能生活の中で、これほど命がけでやった仕事もありません」
おろくと同じ赤いスーツもさっそうと、清川は東京・日劇の完成披露試写会でそう挨拶し、ほとんどマイクも必要としないすばらしい声量に観客は圧倒され、心を打たれた。そして狸の大群の中におろくが登場した瞬間、観客は物語から目が離せなくなったのだ。
おろくと同じ赤いスーツもさっそうと、清川は東京・日劇の完成披露試写会でそう挨拶し、ほとんどマイクも必要としないすばらしい声量に観客は圧倒され、心を打たれた。そして狸の大群の中におろくが登場した瞬間、観客は物語から目が離せなくなったのだ。
この作品でおろく婆を演じたことに対し、「この作品は命の恩人」「この映画は私の命をくれた」とまで仰っていた清川さん。このことを踏まえてぽんぽこを見直すと、より一層深みが感じられるのではないでしょうか?
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