ジブリの絵コンテから分かること。今回は『風立ちぬ』より。
以前の投稿【『風立ちぬ』のラストシーン、二郎と菜穂子は○○の予定だった。】では、当初書かれていた終盤の台詞は映画版とは180度と言っていいほど異なっており、作品全体の印象も大きく違うものだった、ということを紹介しました。
今回はその変化を絵コンテを引用して具体的にご紹介したいと思います。
※作品のネタバレを含みます。まだ『風立ちぬ』を観ていない方はご注意ください。
作品の終盤。二郎はカプローニと夢の草原で出会う。
この夢の草原のシーンからは映画版とはやや異なる台詞が連続しており、
完成までの試行錯誤の跡が見えます。
カプローニ「君に会わせたい人がいる」
風の中やってくる菜穂子
菜穂子「あなた 来て」
カプローニ「君のために祈っていたんだ」
菜穂子「きて…」
涙を流し、二度頷く二郎
喜びと安堵が溢れる菜穂子の表情
やがて風にとけて消えていく菜穂子
カプローニ「彼女は、いま安心して行くべきところへいったのだ」
二郎「ありがとう」
「ありがとう」
カプローニ「わしらも行かねばならんが
ちょっとよってかないか イイワインがあるんだ
つもるはなしをきこうじゃないか…」
去っていくカプローニと二郎
端折った部分もありますが、以上のように、ラストシーンでは数多くのセリフが変更されていることが分かります。
特に菜穂子の「来て」という台詞。完成した映画版の「生きて」とは全く意味が異なるものです。そしてそれに呼応する二郎。「わしらも行かねばならん」と、二人も死んでいる、または死につつあることを示唆するカプローニ。映画では「君は生きねばならん。」に変更されていました。
宮崎駿監督は「悩める限り悩んだ」末にセリフを変更したそうですが、この「来て」という台詞の先に、悩んだ先に、果たして別の答えが出る可能性はあったのか?(もしあれば)見てみたいとも思いました。
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