2014-07-29

行き詰まった『もののけ姫』を救ったCHAGE and ASKAの『On Your Mark』


『On Your Mark』、CHAGE and ASKAの同名曲にミュージックビデオのような形でスタジオジブリ制作の映像が付けられた非常に珍しい作品です。


1995年の『耳をすませば』(監督:近藤喜文)上映時に併せて上映されたもので、宮崎駿原作・脚本・監督、6分40秒の短編となっています。

この作品、実は当時行き詰っていた『もののけ姫』製作の気分転換となっていたそうです。



絵本版『もののけ姫』と映画版『もののけ姫』がまったく違う理由】で触れましたように、宮崎監督は当初、絵本版(イメージボード版)『もののけ姫』とは大幅に異なる映画版の製作に行き詰っていたそうです。そんな時、『On Your Mark』の話が飛び込んできたとのこと。書籍『「もののけ姫」はこうして生まれた。』によると、こうあります。

鈴木プロデューサーの証言を聞こう。「どうしようかと思っている最中、実はですね、『CHAGE&ASKA』の話が飛び込んできたんですね。例の『On Your Mark』です。(後略)

実はこの時点では、鈴木プロデューサーも宮崎さんも、『チャゲアス』を知らなかった。しかし鈴木プロデューサーは瞬間的に「これはいけるかも知れない」と思ったという。宮崎さんの気分転換になるに違いないと。

「なにしろ宮さんも、その当時の『もののけ姫』から気分をちょっと離れたかったんで、そちらの方に、のめり込んでいったんです。まあ『もののけ姫』をやりつつ、こちらもやると、と言いつつ、ある時期は『On Your Mark』に没入したんですね。その結果、彼の中で、踏ん切りがつきましたね。ええ、その『もののけ姫』は捨てようと。新たに創ろうと。それが九五年の二月位だったと思うんですけどね。『鈴木さん、もう全く新しくやるよ。アレにこだわってたから出来なかったんだ。』と言って。それで、今の話(映画の『もののけ姫』)になって行くんですけどね。


屋久島がナウシカのきっかけ!?


さらに話は意外な豆知識へと繋がっていきます。

「それでまぁ、その時彼が言い出したのが『もう一回、屋久島でやろう』って。もう一回というのは、これもまぁエピソードめくんですけどね、彼はある時屋久島へ行って、そこの原生林を見たことが、実は『ナウシカ』のきっかけになるんです。『腐海』の設定ですよね。あそこを使って、もう一回。(後略)」

屋久島は映画版『もののけ姫』に大きな影響を与えた舞台のひとつです。そんな屋久島がナウシカと腐海の源泉にもなっているとは!もちろん、屋久島がナウシカ全ての源泉ではない(バンド・デシネの巨匠メビウスの影響等々)と思いますが、『もののけ姫』と『風の谷のナウシカ』には“屋久島”という繋がりがありました。

そして『もののけ姫』の気分転換となった『On Your Mark』。実際には、これが終わった後にすぐ『もののけ姫』に移れたわけではなく、また別の企画案(毛虫のボロ)があったといいますから、完全な気分転換となったかは分からないそうです