今回は、書籍『折り返し点 1997~2008』より、ジブリ美術館の目指す理想が分かる文章を抜粋してご紹介したいと思います。
まず、宮崎駿さんはジブリ美術館をどんな美術館にしたかったのか?実は、現在の美術館とは別の構想があったようです。以下、宮崎さんの言葉です。
最初は、山を作ってその中に美術館を入れてしまう、入口を山のふもとに作って、出口は山の上で、そこで親子でお弁当を食べてもいいし、山を駆け下りてもいい、というアイデアだったんですが、制約がいろいろあって、結局実現したのは自分たちが考えたことの十分の一になってしまいました。でも、子どもたちがホッとできて、何かワクワクしてハメを外したくなる空間、周りに住んでる人が楽しめる空間を作りたいと、工夫したつもりです。
(初出は『月刊Φ(ファイ)』2002年1月号)
山を作る!?現在のジブリ美術館がある場所にでしょうか?もし実現していればそれは素晴らしい景色だったでしょうね。現在のジブリ美術館は充分良い美術館だと思うのですが、それでも当初の構想の十分の一とは、夢の実現の難しさがよくわかります。
次に、ジブリ美術館は「空間を自分の目で見て、体で感じてほしい」という理由から、館内の撮影が禁止されています。このことは公式サイトにも載っているのですが、そのさらなる詳細な理由を宮崎監督ご本人の言葉として、以下、ご紹介します。
実は館内での写真撮影を禁止にしたんです。そうせざるを得なかった。というのは残念なことに写真を撮るために来る人が多いんです。いる間じゅう、写真を撮るために右往左往している、大人のほとんどがそうですよ。写真を撮るために子どもに「ちょっとどいて」とか、写真を撮るために子どもをネコバスで遊ばせているような状態が生まれていて、これはダメだ、子どもたちは親のカメラから解放されなくちゃいけないと思ったんです。どこに行くにもカメラで撮られているというのは子どもにとっては何の意味もないセレモニーで、写真に撮ることを愛情表現だという錯覚を親が持っているだけ。くだらないからカメラもビデオも禁止。それより自分の目で見てください、この時間を大切にしてください、という意味を込めて。
(初出は『グラフ みたか』2002年3月号)
親には親の思いというものがあるのでしょうが、あまりいい気分ではない理由ですね…。「子どもたちに楽しんでほしい」という思いがある宮崎駿さんにとっては、耐えられないことだったのでしょう。
最後に、現在のジブリ美術館が目指すものとは?宮崎駿さんの言葉からご紹介したいと思います。
こんな美術館にしたい
おもしろくて、心がやわらかくなる美術館
いろんなものを発見できる美術館
キチンとした考えがつらぬかれている美術館
楽しみたい人は楽しめ、考えたい人は考えられ、感じたい人は感じられる美術館
そして、入った時より、出る時ちょっぴり心がゆたかになってしまう美術館!
そのために、建物は……
それ自体を一本の映画として作りたい
威張った建物
立派そうな建物、豪華そうな建物、密封された建物にしたくない
すいている時こそ、ホッとできるいい空間にしたい
肌ざわり、さわった時の感じがあたたかい建物にしたい
外の風や光が自由に出入りする建物にしたい
運営は……
小さな子ども達も一人前にあつかいたい
ハンデをもっている人にできるかぎり配慮したい
働く人が自身と誇りを持てる職場にしたい
道順だの、順路だのと、あまりお客さんを管理したくない
展示物に埃がかぶったり、古びたりしないよう
いつもアイデア豊かに、新しい挑戦を続けたい
そのための投資を続けるようにしたい
展示物は……
ジブリファンだけがよろこぶ場所にしたくない
ジブリのいままでの作品の絵が並んでいる「おもいで美術館」にはしたくない
みるだけでも楽しく、つくる人間の心がつたわり、
アニメーションへの新しい見方が生まれてくる場所をつくりたい
美術館独自の作品や絵を描き、発表する、
映像展示室や展示室をつくり、活き活きと動かしたい
(独自の短編作品をつくって公開したい)
今までの作品については、より掘り下げた形で位置付けて展示したい
カフェは……
楽しみ、くつろぐための大事な所として位置付けたい
ただし、多くの美術館のカフェが運営困難になっている現状からも安直にやりたくない
個性あふれたよい店をまじめにつくりあげたい
ショップは……
お客さんのためにも、遠泳のためにも充実させたい
ただし、売れればよい式のバーゲン風安売り店にしたくない
よい店のあり方を模索しつづけたい
美術館にしかないオリジナルグッズをつくりたい!
公園との関係は……
緑を大切にするだけではなく、
十年後さらによくなるプランをつくりたい
美術館ができて、まわりの公園もゆたかになり、
公園がよくなって美術館もよくなったといえるような形と運営を探し見つけたい!
こういう美術館にはしたくない!
すましている美術館
えらそうな美術館
人間より作品を大事にしている美術館
おもしろくないものを意味ありげに並べている美術館
三鷹の森ジブリ美術館館主 宮崎駿
おもしろくて、心がやわらかくなる美術館
いろんなものを発見できる美術館
キチンとした考えがつらぬかれている美術館
楽しみたい人は楽しめ、考えたい人は考えられ、感じたい人は感じられる美術館
そして、入った時より、出る時ちょっぴり心がゆたかになってしまう美術館!
そのために、建物は……
それ自体を一本の映画として作りたい
威張った建物
立派そうな建物、豪華そうな建物、密封された建物にしたくない
すいている時こそ、ホッとできるいい空間にしたい
肌ざわり、さわった時の感じがあたたかい建物にしたい
外の風や光が自由に出入りする建物にしたい
運営は……
小さな子ども達も一人前にあつかいたい
ハンデをもっている人にできるかぎり配慮したい
働く人が自身と誇りを持てる職場にしたい
道順だの、順路だのと、あまりお客さんを管理したくない
展示物に埃がかぶったり、古びたりしないよう
いつもアイデア豊かに、新しい挑戦を続けたい
そのための投資を続けるようにしたい
展示物は……
ジブリファンだけがよろこぶ場所にしたくない
ジブリのいままでの作品の絵が並んでいる「おもいで美術館」にはしたくない
みるだけでも楽しく、つくる人間の心がつたわり、
アニメーションへの新しい見方が生まれてくる場所をつくりたい
美術館独自の作品や絵を描き、発表する、
映像展示室や展示室をつくり、活き活きと動かしたい
(独自の短編作品をつくって公開したい)
今までの作品については、より掘り下げた形で位置付けて展示したい
カフェは……
楽しみ、くつろぐための大事な所として位置付けたい
ただし、多くの美術館のカフェが運営困難になっている現状からも安直にやりたくない
個性あふれたよい店をまじめにつくりあげたい
ショップは……
お客さんのためにも、遠泳のためにも充実させたい
ただし、売れればよい式のバーゲン風安売り店にしたくない
よい店のあり方を模索しつづけたい
美術館にしかないオリジナルグッズをつくりたい!
公園との関係は……
緑を大切にするだけではなく、
十年後さらによくなるプランをつくりたい
美術館ができて、まわりの公園もゆたかになり、
公園がよくなって美術館もよくなったといえるような形と運営を探し見つけたい!
こういう美術館にはしたくない!
すましている美術館
えらそうな美術館
人間より作品を大事にしている美術館
おもしろくないものを意味ありげに並べている美術館
三鷹の森ジブリ美術館館主 宮崎駿
『三鷹市立アニメーション美術館の開館にむけて 三鷹の森ジブリ美術館』パンフレット(2002年2月15日発行)より
これらを踏まえてジブリ美術館に行くと、より楽しめるかもしれません。
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