2017-10-11

『天空の城ラピュタ』準備稿にある幻の展開がおもしろい!①


基本的には、絵コンテを描きながらストーリー展開を決めていくという制作スタイルを取る宮崎駿さんですが、『天空の城ラピュタ』には準備稿が存在しており、それは書籍『スタジオジブリ作品関連資料集〈1〉』で読むことができます。

この準備稿、準備稿であるがゆえ、完成した作品とは全く違う展開も見られ、その違いが非常に面白いのです。今回はそちらをご紹介します。

まず、序盤から中盤まではほぼ話の展開は同じなのですが、話が大きく異なってくるのはシータをテディス城から救出したあと、タイガーモスにて竜の巣(準備稿ではこのネーミングはありません)を見つけるシーンからです。以下、その部分を引用します。

タイガーモス後甲板
男達甲板に集まり、追ってくる雲の渦を見ている。伝声管がわめく。
ドーラ「シャルル、前へおいで!」
コクピット(※原文ママ)
シャルル「エエ!この嵐に!?」
ドーラ「あの渦の中にラピュタがいるんだ。逃げまわっているだけじゃ、
お宝は手に入らないよ!もぐり込む隙間を探しておいで!」
パズー(顔を出し)「ぼくも行きます!」
ドーラ「サッサッといっておいで!」
シャルル「ハイ!」

なんとここからはシータとパズーではなく、パズーとドーラの息子の一人シャルルがフラップターで飛んでいき、ラピュタ到達まで行動を共にすることになります。

参考までに、こちらがシャルルです。

一方、シータはドーラとそのままタイガーモスに残りますが、フラップターで飛び出ていったものの強風に飲み込まれていくパズー達を見て驚くべき行動を取ります。

コクピット・外
烈風の中、コクピット上の見張り台によじ登るシータ。ドーラ、出て来て風にあおられ、ブリッジの枠にしがみつく。
シータ、立ち上がり、飛行石をかざして叫ぶ。
シータ「レヂアチオ・ルント・リッナ(ものみな静まれ)」
一瞬、強い光芒を発する飛行石。
とたん、はげしい下降気流に把えられるタイガーモス。
(中略)
気流が次第におさまっていく。
眼をあけるドーラ。
ドーラ「……!?」
シータ「シス・テアル・ロト・リーフェリン(失せしもの汝姿を現せ)」
急速に静まっていく大気。シータの声がはっきり聞こえる。
天蓋の雲がうすくなり明るくなり、竜巻は雲の山へ崩れていき、その中腹に大きな道が生まれていく。
ドーラ「ラピュタへの道だ!」
瞠目する海賊達。
海賊「トンネルが生れていくぞ!」
ルイ「すげえ……」
シータ「パズーは何処?パズーーッ」
必死にパズーを探すシータ。と、後方の雲の上からゴリアテが姿を現す。

なんとここでシータは呪文を唱え、それによってラピュタへの道が姿を表すのです。完成した映画版でのシータはラピュタのことは何も知らない様子でしたし、呪文も作中ではバルスを含め2回までしか使用していませんが、ここでのシータはドーラたちを導くように完成版には無かった呪文を唱えています。ラピュタへの道のりに何があるのかを知っていたかのようで、シータというキャラクターに神秘性が増しています。

そしてこの後、ゴリアテの追手から逃れるようにタイガーモスは進んでいき、パズーとシャルルを乗せたフラップターとは離れ離れになっていくのですが…さらに大きな違いを見せていく物語の続きは②で!


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