2022-01-20

押井守監督、高橋留美子先生が『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を気に入ってない事を知っていた&ジブリ版『魔女の宅急便』を原作者の角野栄子さんは嫌っているのか?


今回は、まあそりゃそうだよねといえばそんな感じですが、一応本人からの発言が確認できたのでここに記しておきたかったという話と、「本当にそうなのか?」という話の2つをお届けします。


高橋留美子先生の代表作のひとつである『うる星やつら』、この作品がアニメ化され、さらにそのアニメシリーズを映画化したものが数作ありますが、中でも特に異質を放っているのが2作目の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』です。


監督はご存知、押井守さん。今作も例にもれず押井らしさ全開の奇妙で幻惑的な作風になっており、非常に評価が高い作品です。私も大傑作だと思います。

しかしこの作品は『うる星やつら』としては異質すぎるため、嫌うファンもいるそうです。またネットでよく言われているエピソードとして、他ならぬ高橋留美子先生がこの作品を見て「これは”押井さん”のうる星やつらです」と、暗に自分のうる星やつらとしては認めたくないという趣旨の発言をされたという話が伝わっています。(どうやらよくある与太話ではないようです)

そしてこの高橋先生の言葉、押井監督にも伝わっていました。以下、(当ブログ的ではもはや教科書扱いしている)書籍『誰も語らなかったジブリを語ろう』より、押井監督が『魔女の宅急便』のことを語っている部分からの抜粋です。

――『魔女の宅急便』の原作は角野栄子の同名児童文学。宮崎さんにとっては初の原作ものですね。

押井 原作者は宮さんのこのアニメーションを気に入ってなかった。だからあとで実写版を作らせたでしょ?

――14年に東映が作ってますが、これはまったくいただけなかった(笑)。角野さんが気に入っているのか、それさえ疑わしい。何だかキングの『シャイニング』論争を思い出しましたよ。みんなが絶賛するキューブリック版をキングは大嫌いで、その後にTVでリメイクして失敗した。

押井 僕も似たような目に遭っているから、その状況はよく判る。『うる星2』は一般的には高評価だったけど、原作者の高橋(留美子)さんは全然気に入ってなくて「私とはまったく関係のない作品」と言うぐらい(笑)。ジブリの原作ものというのは、語るべきもうひとつのテーマなのかもね。たとえ原作があっても、ジブリが作るとジブリのオリジナルになっちゃうから。

というわけで、押井監督は高橋先生の『うる星やつら2』への評価を知っておりました。そしてこのような形で『うる星やつら2』の話題に出すということ自体、押井監督は高橋先生のあの評価を今でも気にしていることの現れな気がします。


…ところで、この話題にはもう一つ気になるポイントが。それは押井監督の言っている「原作者は宮さんのこのアニメーションを気に入ってなかった」という言葉です。本当なのでしょうか?

調べてみますと、確かに原作者の角野栄子さんは、宮崎監督の提示したシナリオが原作を大幅に改変していたため、当初難色を示していたそうです。ですが宮崎監督と鈴木プロデューサーによる長期間の交流と説得により、最終的には了承されたそうです。(書籍『ジブリの教科書5 魔女の宅急便』より)

また角野さんは、AERA dot.に掲載されている作家の林真理子さんとの対談「『魔女の宅急便』角野栄子さんがジブリ版を見て思ったこととは」ではこのように仰っています。

角野:『魔女の宅急便』を書き始めたのは49歳のときで、本になったのは50歳のときです。雑誌に1年間連載して、それが本になったら意外と評判がよくて、4年後に映画になったんです。

林:ジブリの映画ですね。最初に見たとき、作者としてどうでした?

角野:「あれ?」と思いました。鈴木(敏夫)さんというプロデューサーが「宮崎駿という人は、あまり原作を使わないので有名だからね」って言うので、そのつもりでいましたけど、私は「タイトルと名前は変えないでください」「世界を変えないでください」とだけ申し上げたんです。だけど、お話の筋がちょっと違うのでびっくりしました。私はもう少し可愛いラブストーリーになるかと思ってたんです。

林:私は、映画と原作との幸せな結婚で、世界が広がっているような気がしました。

角野:ええ、私もそう思います。映画を見てから原作を読む方がすごく多くて、それはそれでよかったと思います。

ここからも分かるように、確かに角野栄子さんはジブリ版を自分の原作とはちょっと違うものだと思っていらっしゃるようです。しかし、最終的にはジブリ版を了承されていること、また林真理子さんの「映画と原作との幸せな結婚で、世界が広がっているような気がしました」という言葉に同意されていることから、「気に入ってなかった」というのは誇張だと思います。

また実写版に関してもインタビュアーの方が「角野さんが気に入っているのか、それさえ疑わしい」と言っていましたが、角野さんはシネマトゥデイのインタビューにこのように答えていらっしゃいます。

「皆さんがご存じのキキがいるでしょ? アニメのね。それから蜷川さんがミュージカルにしたでしょ。今度は清水(崇)監督。いろんな方が創ったキキを見られるというのはとても楽しかった」と振り返った角野。今回の実写映画化についても「わたしのキキはわたしの中にいるんだけど、宮崎さんのキキ、蜷川さんのキキ、清水さんのキキっていうのが、またそれぞれ違って面白いかな」

というわけで、角野さんは別に実写版も嫌がってはいません。どの『魔女の宅急便』も優しく肯定していらっしゃいます。

※この発言は当ブログでも取り上げておりますので、是非お読みください。(参照:ハリウッド版の話もあった!実写版『魔女の宅急便』について、原作者・角野栄子さんの思い

というわけで、書籍『誰も語らなかったジブリを語ろう』、いろいろな意味で面白い本ですね(笑)。





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