ジブリの絵コンテから分かること。今回も『君たちはどう生きるか』の絵コンテ集から見ていきますが、今回は特に作品の世界観が広がるような面白い設定が書かれている部分をご紹介します。
まずは作品序盤、眞人と父である勝一が疎開した「青鷺屋敷」に戦闘機のキャノピーが大量に運ばれてくるシーン。絵コンテにはこのキャノピーが零戦のA6M5、つまり零式艦上戦闘機 52型の物であることが書かれています。(赤丸部分。クリックorタップで拡大できます)
次は眞人が地元の小学生達にいじめられ、自分で頭を傷つけた後に勝一が激怒して現れるシーン。ここには勝一が暗に地元の人間を見下している内心が書かれています。(赤丸部分:地元の貧乏人共にやられたと思っている)
次はあい子さんと眞人が夏子と眞人の母の話をするシーン。あい子さんは7人のお婆ちゃんズや屋敷の人たちの中でも「主」であることが書かれています。
シーンは一気に飛びまして、次は眞人が塔に入り「向こう側の世界」へ行ってすぐのシーン。この向こう側の世界は「神様が半分しか造らなかった世界」であると説明されています。ここで言う「神様」とは、大叔父のことなのでしょうか?そして、なぜ半分しか造らなかったのでしょうか?想像を掻き立てる文章です。
そして若キリコが眞人を連れて来た、ワラワラなどが居た船の残骸のシーン。ここは案の定モデルがベックリンの死の島であることが説明されております。またこの船は巨大な「箱船」の残骸であることも書かれています。何を乗せて、どこへ向かう箱船だったのか…。
絵コンテには「ワラワラ図鑑」もあります。ワラワラはちょっとだけ足が伸びるそうです(笑)。
シーンは再び一気に飛びまして、次はヒミと眞人が元の世界に戻れる無数の扉がある場所を訪れるシーン。この場所は「時の回廊」と呼ばれていることが説明されています。終盤、まさに命が失われようとしている大叔父が「時の回廊に行け」というセリフを発しますが、それはつまりここの事だと明確に分かります。「時の回廊」という名前なのですから、扉の向こうには、無数の異なる時間の現実世界があるのでしょう。
そして個人的に一番面白かったのはこの部分。眞人たちがインコの巣に潜入するシーンでは、インコの巣について多くの説明がされています。ここには商店街や保育園、農園などがあり、赤インコや緑インコの町もどこかにあるそうです。
次はヒミがインコ大王たちに捕まってしまったシーン。ここでは多くのインコたちがなにやらインコ大王の行進を祝福しているように見えますが…
実は「殺せ」と叫んでいるそうです…意外と怖かった…。
次はインコ大王と大叔父が会話するシーン。二人は旧い友人なのだそうです。
次は終盤、眞人とキリコさんが現実世界に戻ってきたシーン。実はキリコさんの肩に止まったインコはインコ大王だったのですが、皆さん気が付きましたでしょうか?
そしていよいよ最後のシーン。このシーンの眞人は中学生になったことが書かれています。そしてナレーションではこのシーンが「戦争が終わって二年後」であることが説明されていますので、つまり眞人が「向こう側の世界」に行った時から三年の月日が経っており、ここから眞人の年齢も判明します。
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