2025-11-02

「カルシファーって、本当は主役なんです」『ハウルの動く城』カルシファー役の我修院達也さんが語った宮崎監督との会話、喉への負担


今回は、文春オンラインに掲載されていた、多彩な才能を持つマルチタレントさん?と呼べばいいのでしょうか?な、我修院達也さんへのインタビュー記事『「おいら消えちゃうよ~」『ハウルの動く城』カルシファー役・我修院達也が語る「ジブリ声優の宿命」』より、個人的に面白かったジブリに関する箇所をご紹介します。

一応、以下が我修院さんです。写真は御本人ホームページより。見た目のインパクトも抜群です。


早速、その気になった部分のみ抜粋してご紹介します。

――『千と千尋の神隠し』(01)で〈青蛙〉を演じてから3年後に、『ハウルの動く城』で火の悪魔〈カルシファー〉を演じられます。2度目の宮崎監督作品、2度目のジブリ作品でしたね。

我修院 そうですね。出演させていただくまでの経緯は『千と千尋』と似た感じ。〈カルシファー〉役でオファーをいただいて、オーディションもしませんでした。最初から決まっていましたね。ジブリに伺って宮崎監督に「また、よろしくお願いします」とご挨拶をしたら、「ごめんなさいね、また人間の役じゃなくて」と仰って(笑)。

(中略)


我修院 「子どもが喜ぶようにやってください」「悪魔だけど、子どもが怖がったり、逃げ出したくなったり、泣き出すようなのは駄目ですよ」「だけど、怒ったら怖いところがあるということをちょっと見せてほしい」とも言われましてね。さらに「あなたはいろんな声が出せるけれども、ぜんぜん違う声を出しちゃうとあなただってわからなくなっちゃうから駄目」と続いて、「〈カルシファー〉って、本当は主役なんですよ」「原作の小説は『魔法使いハウルと火の悪魔』というタイトルで、〈カルシファー〉も主役なんですよ」って教えられたんです。火がなければ城が動かないんだから、たしかにそうですよね。で、そのうえで「あなたに任せます」と(笑)。


オーディションなしのオファー、信頼の証ですね。我修院さんの演じられるキャラクターは唯一無二なのでそれも当然かと思う一方、実はナウシカ役などでおなじみの島本須美さんは、他のジブリ作品のオーディションに参加して落選されている経験もありますので、我修院さんはもはや「この人しかいない!」という相当な優遇をされていたというわけです。

【参考:ナウシカ役の島本須美さん、ラピュタのシータ役とトトロのサツキ役のオーディションを落ちていた!

そして宮崎監督の独自の視点がここに垣間見えます。『ハウルの動く城』の主人公はハウルとソフィーだけではない、カルシファーも主役なんですよという言葉、これこそが宮崎監督が作品を自分流に染め上げる能力の持ち主であるということが見て取れる視点だと思います。飛んでいる鳥に「飛び方が間違ってる!」と言ってしまうほどに自分の理想が存在する、それが作品にも活かされるので、原作付きの作品もただ物語をなぞっただけの映像化にならないのではないでしょうか?

続きます。


――声の設定を決めるのに、どれくらいの時間を掛けたのですか?

我修院 5分くらいです。いろいろと要望を聞かせてもらったら、監督は「じゃあ、もういいですか。今度はちゃんとサブの中に入りますから」って。『千と千尋の神隠し』の頃は、録音スタジオにサブ(調整室)を仕切る壁がなかったけど『ハウル』の時には仕切られていた。これなら、『千と千尋』の時みたいに、監督が僕の声を聞いて吹き出しても大丈夫だって思ったね(笑)。


5分…一言、プロですね。

続きます。


――〈カルシファー〉のセリフで、思い入れの深いものはありますか?

我修院 火が消えそうになって、懸命に消えたくない思いを伝えるところかな。「ソフィー、消えちゃうよ。ングッ、ワァ~」なんて叫んでいる場面。〈カルシファー〉の「消えてしまう」は「死んでしまう」ことですから、死ぬ思いになって絶叫しなきゃいけない。やっぱり、叫ぶのは喉が痛いし、苦しくなるんですよ。

 一発でオーケーが出たけど、絶叫している間の何秒かは声帯振動数が凄まじいレベルで上がってしまう。音色を変えるということは、声帯振動数を変えていることなんです。ゆえに、相当なレベルの負荷が喉に掛かる。お医者さんに言わせると、これを続けるとポリープができてしまうそうです。

――では、収録で喉はボロボロになっていたと。

我修院 痛かった。キャラ声を出す時って、喉が痛いんですよ。モノマネをやってた頃は、郷ひろみの声で歌うことで喉が痛くなっていました。当然だけど、本人は痛くないんですよね。その代わり、本人はその声しか出せない。僕の“地声”はこれといって特徴もない声だからこそ、細かくいろんな声が出せるんです。色も白だといろんな色に染められるのと一緒です。これが例えば森進一さんみたいな声だと、色が濃すぎてその声しか出せない。


「音色を変えるということは、声帯振動数を変えていること」という我修院さんの言葉は、声の演技がいかに大変な作業であるかを物語っています。多くの人にインパクトのある声と演技を届けるためには、喉への負担は当たり前なのだと、そして「音色を変える」とはどういうことなのかに思いを馳せられて、初めてプロなのだとここでは暗に書かれているように思います。

ところで、私も世代ではないのですが、ここでも言及されているように、我修院さんはかつて「若人あきら」という芸名でものまねタレントとして活動されていたことがあるそうで、その頃に、いまでも謎が残る「奇妙なトラブル」に巻き込まれ、芸能活動を長期間休止していたという経歴があります。この方自体がかなり「個性が強い」人生をお持ちのようですね。

ご紹介するのは以上になりますが、我修院さんへのインタビューはまだまだ続いており、さらにシリーズにもなっておりますので、興味のある方は文春オンラインから全文を読んでみてください。(https://bunshun.jp/articles/-/4452


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