2014/03/25

ジブリの広報誌『熱風』3月号 「追悼 フレデリック・バックさん」


毎月十日発行のスタジオジブリ広報誌『熱風』。
3月号は「追悼 フレデリック・バックさん」です。
http://www.ghibli.jp/shuppan/


この小冊子『熱風』は無料で配布されている非売品ですが、取り扱っている書店は全国でも限られています。(参照: http://www.ghibli.jp/shuppan/np/007496/
あとは定期購読するという手があるのですが、(参照: http://www.ghibli.jp/shuppan/np/007495/)興味のある号だけ読みたい方にはやや難儀といえるでしょう。

3月号はフレデリック・バックさんを追悼した号であり、非常に貴重な一冊と言えます。

追悼文には、スタジオジブリやバック展の関係者、2001年のアカデミー賞短編アニメーション賞受賞をはじめ、数々の映画賞を獲得した傑作アニメーション『岸辺のふたり』(http://www.crest-inter.co.jp/kishibe/)のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット、バックさんの作品の音楽を多数担当したノルマン・ロジェ、などの方々が文章を寄せていますが、

このブログとしては、(個人的に)特に欠かせないと思われる、高畑勲氏とアレクサンドル・ペトロフ氏の追悼文を、入手できなかった方のために一部抜粋してご紹介したいと思います。


■フレデリック・バックさんを偲ぶ ―― 高畑勲
バックさん。バックさんはいま、やすらかにお憩いになっていらっしゃるのでしょうか。
私は日本人なので、バックさんが遠いところへ行かれたとは思いません。
きっとこの地球から離れることなく、ひとやすみされたら、
私たち人間が植物や生きものたちとうまく折り合いをつけて生きていけるかどうか、
心配しながらずっと見守っていかれるのではないかと思っています。

バックさんは生前、おだやかであたたかく、慈父のような方でした、しかし同時に、
自然に対する人間のひどい仕打ちを決して許すつもりのない、厳しいエコロジストでした。
アニメーション映画についても厳しく、世の中にとって意味のある作品が
非常に少ないことを、少なくとも私への私信の中で嘆いていらっしゃいました。

(中略)

『クラック!』をロサンジェルスの映画館で見て衝撃を受けて以来ファンとなり、
私はバックさんを、その生み出した作品と生き方の両面で我が師と仰いできました。
アニメーション表現に関しては、すでに『ホーホケキョ となりの山田くん』のときから、
そのヒントのひとつがバックさんの作品です、と書いてバックさんを困惑させました、
今回の『かぐや姫の物語』はその延長上にあり、はっきりとバック作品に影響を
受けています。

(中略)

私がフレデリック・バックさんに最後にお会いしたのは、
亡くなる八日前、昨年12月16日です。
新作の『かぐや姫の物語』をご覧いただくためにモントリオールを訪れたのです。

(中略)

私たちがお体を気遣って一時間半ほどで止めるまで、
「イメージの中に、何も描かれていない部分がある。
何かをほのめかすのだけれど、あえてそこを埋めようとはしていない空間」とか、
「私は作品にとても感動したし、私の考えを理解してくれてとても嬉しく思う」とか、
「おまえはいいスタッフ(エキップ)に恵まれている」などと言ってくださったのです。
私はバックさんの手を握りしめながら、ただただ有頂天でした。そして……

12月24日フレデリック・バックさんご逝去の知らせに茫然となりました。
悲しみよりも、名状しがたい感慨におそわれたのです。
ああ、バックさんは私たちを待っていてくださったのだ、と。
そして深い感謝の念に捉えられたのでした。

(『キネマ旬報』のための追悼文に加筆)


■追悼 ―― アレクサンドル・ペトロフ (翻訳:児島宏子)
フレデリック・バック。
これは、私にとって非常に大切な名前。
数多の善意を注いでくれた人の名前である。

私たちが知り合う前から、彼は善意を示してくれた。
様々なコンクールで私のフィルムを支持し擁護しつつ。
私の最初の教え子マルチン・シャトランのために推薦状を書いてくれた時にも。
ユベルドーの丘、自分の森の《映画ホール》に樫の若木を植え、
そのホールに私の名前をつけた時も。

(中略)

他の作家たちの創作に彼は常に好意を持って接していた。
他人の成功を彼は大いに喜び、作者を賞賛することをいとわなかった。
いつも彼は人の才能を愛し評価した。
しかし才能の中に、時に見られる自己満足とシニシズムを彼は決して良しとしなかった。
芸術家たちの仕事が無責任になされるとき彼は心から悲しんだ。

(中略)

私は文字通り、そして心の底から彼を師と仰ぐ。
フレデリックの下ではすべてが学べる。彼の、芸術家としての飛び抜けた技、
すべてにおいて几帳面なこと、人生の細部に対する注意深さ、
自然への心身をかけての愛情、無慈悲な自然破壊にたいする怒り。
仕事にたいする驚嘆すべき能力、市民としての前向きな姿勢、等々。
エレガントなユーモアも。

(後略)



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