『もののけ姫』のタタラ場にいる包帯を巻いた病の人々、彼らの患っている病がハンセン病を思わせるという説は長らく語られている話です。
作中では彼らの病が何なのか明かされておりませんが、宮崎監督は『もののけ姫』に登場した病者の人々はハンセン病であると明言しております。以下、東京新聞の記事からの引用です。
全生園の近くに住み、たびたび園や隣接する国立ハンセン病資料館に足を運んできた宮崎さん。
(中略)
初めて訪れたのは二十数年前、代表作「もののけ姫」(一九九七年公開)の構想中に行き詰まり、ノートを手に歩き回るうちにたどり着いた。入所者が植えた桜の巨木の生々しさに圧倒されて、その日は帰宅。後日あらためて資料館を訪問すると、療養所内で使われていた専用通貨などの展示品に衝撃を受けた。
以来通う度に「おろそかに生きてはいけない。作品をどう作るか正面からきちんとやらなければ」と痛感したという。「無難にせず、『業病(ごうびょう)』と言われたものを患いながらも、ちゃんと生きた人をきちんと描かなくては」と決意し、ハンセン病患者を思わせる人たちを「もののけ姫」に描き込んだ。
主人公の少年アシタカが受けたのろいのあざもハンセン病から着想を得たと明かし、「あざはコントロールできない力とむしばんでいくもの、両方を持つ。そういう不合理な運命を主人公に与えた。それはハンセン病と同じ」と言及。「反応が怖く覚悟が必要だったが、(元患者の)みなさんが喜んでくれて肩の荷が下りた」と語った。
(中略)
初めて訪れたのは二十数年前、代表作「もののけ姫」(一九九七年公開)の構想中に行き詰まり、ノートを手に歩き回るうちにたどり着いた。入所者が植えた桜の巨木の生々しさに圧倒されて、その日は帰宅。後日あらためて資料館を訪問すると、療養所内で使われていた専用通貨などの展示品に衝撃を受けた。
以来通う度に「おろそかに生きてはいけない。作品をどう作るか正面からきちんとやらなければ」と痛感したという。「無難にせず、『業病(ごうびょう)』と言われたものを患いながらも、ちゃんと生きた人をきちんと描かなくては」と決意し、ハンセン病患者を思わせる人たちを「もののけ姫」に描き込んだ。
主人公の少年アシタカが受けたのろいのあざもハンセン病から着想を得たと明かし、「あざはコントロールできない力とむしばんでいくもの、両方を持つ。そういう不合理な運命を主人公に与えた。それはハンセン病と同じ」と言及。「反応が怖く覚悟が必要だったが、(元患者の)みなさんが喜んでくれて肩の荷が下りた」と語った。
実は絵コンテを読むと、このタタラ場に住むハンセン病の方々について、さらに詳しいことが分かるのです。今回は、その絵コンテの該当部分をご紹介します。
まずは確認:ハンセン病とは?
ハンセン病とは何か?公益財団法人 日本財団(http://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/leprosy/about/)および公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会(http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n278/n278015.html)によると、
人類の歴史上もっとも古くから知られ、恐れられてきた病気の一つであるハンセン病は、らい菌(Mycobacterium leprae)が主に皮膚と神経を侵す慢性の感染症ですが、治療法が確立された現代では完治する病気です。1873年にらい菌を発見したノルウェーのアルマウェル・ハンセン医師の名前をとり、ハンセン病と呼ばれるようになりました。
かつてハンセン病(「癩病(らいびょう)」)は遺伝性のものと考えられ、「業病」や「天刑病」などと呼ばれ、前世の罪の報い、もしくは悪しき血筋による病との迷信があり、それを発病することは少なからぬ罪悪を犯すことと同義とされた。もし一人でも親族に発病者が出ると、その家は共同体の中で一切の関係性を断絶され、時には一家離散に追い込まれたという。
古い時代から日本の患者には、家族に迷惑がかからないように住み慣れた故郷を離れて放浪する「放浪らい」と呼ばれた方も数多くいました。その後、明治時代に入り「癩予防に関する件」「癩予防法」の法律が制定され、隔離政策がとられるようになり、ハンセン病患者の人権が大きく侵害されました。
ハンセン病は「業病」であり同時に凶悪な伝染病であるという、患者にとって極めて不都合な偏見が幾重にも重なり合っていた。
現代では完治するということですので、心配はいらないわけですが、かつてハンセン病はその知識不足から「前世の罪の報い、もしくは悪しき血筋による病」とみなされ、罹患者は非常に差別され、偏見を持たれていたことがわかります。「業病」という発想自体、今では考えられないことです。ハンセン病は実際には以下の様なものであるそうです。
感染経路はまだはっきりとはわかっておらず、治療を受けていない患者との頻繁な接触により、鼻や口からの飛沫を介し感染するものと考えられていますが、ハンセン病の感染力は弱く、ほとんどの人は自然の免疫があります。そのためハンセン病は、“最も感染力の弱い感染病”とも言われています。
絵コンテの記述
ハンセン病に与えられた別名である「業病」という言葉、これが絵コンテの、エボシ御前が病者の仕事場を訪れたシーンに出てくるのです。
赤丸が該当部分。
「業病の者の病棟兼仕事場」
つまり、絵コンテからも病者たちの病気がハンセン病であることがわかるのです。さらに、病者たちの住む場所について、このように記述されています。
「そこは タタラ場の中の隔離病棟。見張り小屋もある」
非常に悲しい事実です。作中では明確に明かされてはいませんでしたが、ハンセン病にかかった彼らは、歴史的事実と同じく、やはりタタラ場でも隔離されていたのです。医療知識がまだ不足していた時代のこと、仕方なかったとはいえ存在していた差別と偏見。病者が登場するシーンは物語のメインではありませんが、重要なメッセージが込められていることがわかります。
ちなみに、病者の長とされる人物、作中ではアシタカに対しエボシを殺さぬよう懇願する者として登場していましたが、この方、絵コンテを見ると…
発病するまでは名のある僧だったそうです。
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