2016/10/10

『千と千尋の神隠し』の前に作られるはずだった幻の新作『煙突描きのリン』


今回は、『千と千尋の神隠し』の前に宮崎監督が構想していた作品『煙突描きのリン』の物語と、この企画が中止になってしまった理由をご紹介します。

以下、書籍『宮崎駿全書』より引用です。
 念願の銭湯を描く「リン」は、後日明かされた資料によれば、以下のような物語であった。
 群発地震によって廃墟と化した首都東京。片隅に残った古びた商店街と銭湯ーーそれは平安時代から東京を影で支配していた石原一族のものであった。大阪の画学生リン(18歳)は、自転車で旅をする途中で銭湯に立ち寄り、老婆に見込まれて宿舎に住む。東京都は石原一族に立ち退きを要求。謎の陰謀集団も暗躍し、ラストには銭湯の大屋根の立ち回りと新都市の崩壊、首都高速道路でも追っかけなどの大仕掛けまで用意されていた。

あらすじを読んでいる限り、『千と千尋の神隠し』とはあまり関係がないようです。しかし「銭湯」という要素は『千と千尋の神隠し』に引き継がれています。またその中に登場するリンと名前が同じなのは、その名残りでしょうか?

「群発地震によって廃墟と化した首都東京」という設定は、後の東日本大震災を予見させるものになっている気がします。さらにストーリーは東京を再度崩壊させるようですので、さながら『AKIRA』のようなイメージも持っているでしょうか?宮崎監督が現在の文明社会に対して“破壊願望”ともいうべきものをもっているのは、いくつかのインタビューの中でもわかりますが、この作品ではそれが如実に現れているようです。

さらに、この作品は書籍『ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し』に収録されている鈴木プロデューサーの語り下ろしによると、こんな展開もあったそうです。
『ホーホケキョ となりの山田くん』の制作が佳境に入りつつあったころ、宮さんが僕の部屋にやって来ました。
「新しい企画ができたよ、鈴木さん。『煙突描きのリン』っていうんだ」
 震災後の東京を舞台に、風呂屋の煙突に絵を描く二十才の女の子の話だといいます。その女の子がある陰謀に巻き込まれて、すったもんだの大騒動が起きる。その相手側のボスというのが六十歳のじいさん。どうも話を聞いていくと、そのじいさんというのが宮崎駿自身なんですね。そして、こともあろうか敵対する二人は年の差を超えて恋に落ちるーー。
 とんでもないラブストーリーです(苦笑)。

20才と60才の年の差恋愛!もはやロ○コンと言っていいものかどうかすらわからない年齢差です。実現していたら良くも悪くも凄い反響があったのではないでしょうか?しかし、この作品はとある理由により頓挫します。再び『宮崎駿全書』より引用です。

 「煙突描きのリン」の企画は、1999年8月に突如として廃案になった。鈴木敏夫によって語られている顛末はこうである。
 映画『踊る大捜査線 THE MOVIE』(98年、本広克行監督)を遅れて観た鈴木は、淡々と意見を述べ合う冷めた若者像に妙なリアリティを感じ、若い世代の演出に関心した。同時に、老境に差しかかった宮崎に、『踊るー』に匹敵する現代の若者像が打ち出せるのかどうかを危惧した。鈴木は「次回作は子供のための作品にすべき」と宮崎を説得し、宮崎もこれを受け入れたという。

映画『踊る大捜査線 THE MOVIE』に影響を受けて…というところに非常に時代性を感じますね。冷めた若者像とは、おそらく、『踊るー』の作中において、ゲーム感覚で警視庁副総監を誘拐し、アジトを見つけられてもなお淡々とゲーム感覚のままでいた犯人の若者たちのことを指しているのだと思われます。

以上のような理由で『煙突描きのリン』は幻の作品となりましたが、いくつかの要素は『千と千尋の神隠し』に引き継がれていますし、千尋やカオナシの性格は、結果的に非常に“現代の若者”的です。何より、これで『千と千尋の神隠し』が作られたのですから、この判断は良かったのかもしれないですね。でも、40歳の年齢差恋愛も、ちょっとは見てみたかった…?

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