『となりのトトロ』の上映時間は88分です。他のジブリ作品に比べて短い方だといえます。しかし、当初はもっと短い60分の作品になる予定でした。では、どうして20分以上伸びたのか?それは当時同時上映された『火垂るの墓』の、というよりは、高畑監督の影響でした。
以下、書籍『ジブリの教科書3 となりのトトロ』鈴木敏夫プロデューサーの制作秘話「二本立て制作から生まれた奇跡」よりご紹介します。
宮さんという人は、高畑さんに対する思いが、愛したり憎んだりの二律背反なんです。やり始めてからもいろんなことがありましたけれど、一番困ったのは、60分ずつのはずの作品が60分ずつじゃなくなったこと。最初にそのルールを破るのは、当然、高畑さん(笑)。88分になる。時間のことはちゃんと言ってあったのに、高畑さんにとっては関係ないんです。そしたら宮さんだって気になるじゃないですか。「高畑さんはどのくらいになりそうなの?」と聞いてくるんです。「ちょっと長くなりそうですね」。「60分じゃないでしょ」。「そうですね、80分くらいですかね」。
このことが『となりのトトロ』に大きな影響を与えることになりました。『となりのトトロ』は本来、女の子とオバケの交流で、その女の子は一人だったんですが、高畑さんへの対抗心に燃えた宮さんは「映画を長くするいい方法はないかな」と言い出して、それで一人の女の子を姉妹にすることを自ら思いつくんです。サツキとメイは、宮崎駿の負けず嫌いの性格から誕生したのです。
このことが『となりのトトロ』に大きな影響を与えることになりました。『となりのトトロ』は本来、女の子とオバケの交流で、その女の子は一人だったんですが、高畑さんへの対抗心に燃えた宮さんは「映画を長くするいい方法はないかな」と言い出して、それで一人の女の子を姉妹にすることを自ら思いつくんです。サツキとメイは、宮崎駿の負けず嫌いの性格から誕生したのです。
高畑監督への対抗心から20分以上伸びたのですから、ある意味では高畑監督に感謝しなければならないでしょうか?(笑)作品の時間を無視してしまう高畑監督の性格は私たち観客側からすればありがたいですが、実際に一緒に仕事をする上では大変でしょうね。
次に、参考として絵本用の作品として考えられていた頃のトトロの絵をご紹介します。鈴木プロデューサーの言うように、この頃の絵には女の子は一人しか居ません。
そしてこちらが映画用のポスター。ここでもまだサツキとメイは居ません。サツキとメイを作り出す前に作られたポスターだからでしょうか?実はそうではないようです。
そこにはこんなエピソードがありました。以下、先ほどと同書より引用です。
いよいよ映画を作って、ポスターを描かなければいけないとなりました。もともとバス停でトトロを女の子が立っている絵があったんですけど、その時は姉妹でなくて一人だったので、宮さんも今度はトトロの隣にサツキとメイの二人を立たせようとしたんです。でも、うまくいかない。それで、女の子は、メイとサツキの合体になりました。あのポスターの絵をよく見ていただくとわかるんですけど、ヘアスタイル、背の高さ、着ている洋服は、サツキとメイを合わせたもの。メイちゃんでもないしサツキでもない。宮さん、そういうセンスは、ほんとうに面白いです。
なんと宮崎監督は、作品内にサツキとメイという二人の女の子を作っていたのにも関わらず、あえてポスター用の絵には二人をかけ合わせた女の子を登場させていたのです。本編には登場しない女の子をポスターにだけ存在させてしまうとは、鈴木プロデューサーの言うとおり、面白いセンスです。
※ちなみに、『となりのトトロ・絵コンテ集』の宮崎駿インタビューによると(『THE ART OF TOTORO』より)、宮崎監督は映画化の話がある前から、雨の日にバス停で父を待っている時にトトロと出会う女の子の絵と、日中に陽なたの草むらで中・小トトロと出会う女の子の絵を描いており、「二人の女の子が存在してしまった」と思っていたそうなので、『火垂るの墓』の件の前から、頭の片隅には「二人の女の子」がいたのかもしれませんね。
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