2016-10-05

こうなるかもしれなかった!?『となりのトトロ』幻の歌詞案


あらゆる創作物は、完成までにいろいろな試行錯誤がなされているのだと思います。そして、それが完成までにどういう道筋を辿ったのか?を知ることは、その作品がなぜ面白いのか?を知ることに繋がるのではないでしょうか?

今回は、書籍『スタジオジブリ作品関連資料集Ⅱ』に掲載されていた、宮崎監督が書いた『となりのトトロ』の歌詞案を4つご紹介します。


まずはこちら。打ち合せの際に書かれたものだそうです。

以下、歌詞を書き出してみました。
雨ふり 森の中
神秘の世界が 待ってる
こわがらないで のぞいてごらん
だれかが 出てくる
すてきな冒険 はじまる

雨ふり 森の中
ズブぬれ だれかが待ってる
目と目で かわす 秘密の暗号
連れてって 夢の国へ
すてきな冒険 はじまる

こちらは歌詞から判断するに、『となりのトトロ』(歌)の草稿だと思われます。完成版とは異なるフレーズが多いですが、完成版が持っている「子供にも分かりやすい、親しみやすい」要素はしっかりと含まれているように感じます。ただ、「こわがらないで のぞいてごらん だれかが 出てくる」というフレーズは、小さな子供にとってはやや怖いものを連想させる言葉でしょうか?

次の歌詞は、私は一番気になりました。「イメージアルバム用に書かれたもうひとつの歌詞案」だそうです。とてもノスタルジックで、哀愁と寂しさが漂う歌詞になっています。

小さな写真

①アルバムの色あせた写真の中で
セピア色の麦わら帽子かしげて
笑ってる 小さな女の子
白く光ったエクボ まぶしい笑顔

お母さんが小さな女の子
だった頃の写真
なつかしい遠い夏の日の
届かない あこがれ

②サルスベリ影おとす門の脇で
セピア色の知らない仔犬だきしめ
笑ってる 小さな女の子
白く光ったエクボ まぶしい笑顔

お母さんが小さな女の子
だった頃の写真
なつかしい遠い夏の日の
届かない あこがれ

宮崎監督の母は病弱だったそうですので、その思いでが大きく関係しているように見える歌詞です。『おもひでぽろぽろ』の幻の歌詞こちらをクリックでも感じたことですが、宮崎監督は“過ぎ去った日々”への思いが強いように感じます。ちなみにこの『小さな写真』は、後に久石譲さんがイメージ・ソング集で歌っております。

となりのトトロ イメージ・ソング集
となりのトトロ イメージ・ソング集サントラ,井上あずみ,杉並児童合唱団,北原拓,森公美子,久石譲

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もしこの曲が作中で使用されていたら、『となりのトトロ』という作品のイメージも「もう戻れない日々」を思う郷愁を伴った作品として、大きくイメージが大きく変わっていたのではないでしょうか?

次の歌詞、こちらも打ち合わせの際に書かれたものだそうです。

上半分の歌詞は『となりのトトロ』完成形の2番とほぼ変わりありません。そして下半分の歌詞は先ほどの『小さな写真』をやや修正したもののようです。最後に『「~小さな写真」の2番 上のように直してください』と書いてあるということは、先ほどの歌詞よりも後に書かれたものだと思われます。

最後はこちら。

こちらは皆がよく知る完成形の歌詞の1番とほとんど違いがありません。「お庭に 木の実 うずめて」が完成形では「小路に 木の実 うずめて」に、「はじまる すてきな冒険」が「すてきな冒険 はじまる」に変わっているだけです。

おそらくはもっと試行錯誤が行われた上で、現在の歌詞が完成したのだと思われます。曲が完成するまでにどのような試作がなされたのか?いろいろな曲で見てみたいですよね。


明るい歌詞にして良かった…?






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