あらゆる創作物は、完成までにいろいろな試行錯誤がなされているのだと思います。そして、それが完成までにどういう道筋を辿ったのか?を知ることは、その作品がなぜ面白いのか?を知ることに繋がるのではないでしょうか?
今回は、書籍『スタジオジブリ作品関連資料集Ⅱ』に掲載されていた、宮崎監督が書いた『となりのトトロ』の歌詞案を4つご紹介します。
まずはこちら。打ち合せの際に書かれたものだそうです。
以下、歌詞を書き出してみました。
雨ふり 森の中
神秘の世界が 待ってる
こわがらないで のぞいてごらん
だれかが 出てくる
すてきな冒険 はじまる
雨ふり 森の中
ズブぬれ だれかが待ってる
目と目で かわす 秘密の暗号
連れてって 夢の国へ
すてきな冒険 はじまる
神秘の世界が 待ってる
こわがらないで のぞいてごらん
だれかが 出てくる
すてきな冒険 はじまる
雨ふり 森の中
ズブぬれ だれかが待ってる
目と目で かわす 秘密の暗号
連れてって 夢の国へ
すてきな冒険 はじまる
こちらは歌詞から判断するに、『となりのトトロ』(歌)の草稿だと思われます。完成版とは異なるフレーズが多いですが、完成版が持っている「子供にも分かりやすい、親しみやすい」要素はしっかりと含まれているように感じます。ただ、「こわがらないで のぞいてごらん だれかが 出てくる」というフレーズは、小さな子供にとってはやや怖いものを連想させる言葉でしょうか?
小さな写真
①アルバムの色あせた写真の中で
セピア色の麦わら帽子かしげて
笑ってる 小さな女の子
白く光ったエクボ まぶしい笑顔
お母さんが小さな女の子
だった頃の写真
なつかしい遠い夏の日の
届かない あこがれ
②サルスベリ影おとす門の脇で
セピア色の知らない仔犬だきしめ
笑ってる 小さな女の子
白く光ったエクボ まぶしい笑顔
お母さんが小さな女の子
だった頃の写真
なつかしい遠い夏の日の
届かない あこがれ
宮崎監督の母は病弱だったそうですので、その思いでが大きく関係しているように見える歌詞です。『おもひでぽろぽろ』の幻の歌詞【こちらをクリック】でも感じたことですが、宮崎監督は“過ぎ去った日々”への思いが強いように感じます。ちなみにこの『小さな写真』は、後に久石譲さんがイメージ・ソング集で歌っております。
となりのトトロ イメージ・ソング集 | |
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もしこの曲が作中で使用されていたら、『となりのトトロ』という作品のイメージも「もう戻れない日々」を思う郷愁を伴った作品として、大きくイメージが大きく変わっていたのではないでしょうか?
上半分の歌詞は『となりのトトロ』完成形の2番とほぼ変わりありません。そして下半分の歌詞は先ほどの『小さな写真』をやや修正したもののようです。最後に『「~小さな写真」の2番 上のように直してください』と書いてあるということは、先ほどの歌詞よりも後に書かれたものだと思われます。
最後はこちら。
こちらは皆がよく知る完成形の歌詞の1番とほとんど違いがありません。「お庭に 木の実 うずめて」が完成形では「小路に 木の実 うずめて」に、「はじまる すてきな冒険」が「すてきな冒険 はじまる」に変わっているだけです。
明るい歌詞にして良かった…?
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