2016/12/23

『天空の城ラピュタ』の「バルス」はトルコ語の「平和」という意味ではありません。


バルス!

『天空の城ラピュタ』のいちばん有名なシーンとセリフであろうこちら。それゆえか、おかしな説もどうしてもついて回ってしまうようです。この「バルス」という言葉の意味、ネットでは『バルスはトルコ語の「平和」という意味が由来である』という説が公式設定であるかのように飛び交っています。でも…本当なんでしょうか?

『天空の城ラピュタ』という作品には“リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ”など、独自のラピュタ語が存在するのだから、バルスもラピュタ語という設定なのでは?と思うのですが、どうやら思った以上にこの「平和」説が公式設定かのように独り歩きしているようです。そこで今回は、この「バルス」はトルコ語で平和という意味なのか?というのを調べてみました。

早速ですが、結論から言うと違います。まず、元スタジオジブリの木原浩勝さんが書かれた書籍『もう一つの「バルス」 -宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代-』から引用してみます。
 この「バルス」は、トルコ語で「平和」を意味する言葉だという話は書籍やネットなどではすでに常識と言っていいほど多くの人に知られているらしい。
 しかし、そもそも準備稿では、

シータ「バルス(とじよ)」

と書かれてある。

(中略)

さて、ここから準備稿のみに登場するラピュタ語だが、ここではシータはタイガーモス号に乗ったままで、飛行石も持っている。
竜の穴の暴風の中、ブリッジの柱にしがみついたシータは飛行石をかざして、
「レヂアチオ・ルント・リッナ(ものみな鎮まれ)」
 とラピュタ語の呪文を唱える。
 さらに、
「シス・テアル・ロト・リーフェリン(失せしもの汝姿を現せ)」
 と唱えて天空に道を開く。
 ここまでシータが口にした言葉あるいは呪文は、ラピュタ語として書かれている。
 これらを鑑みれば、
「バルス(とじよ)」
 という言葉は宮崎さんの頭の中において、トルコ語ではなくラピュタ語の認識のはずだから、平和とは別の言葉であった可能性が高い。

以上のように、準備稿の段階では、バルスには「とじよ」という意味があることが書かれており、これがバルスの意味であることが判明しています。他の言葉のようにラピュタ語として創作され、その意味も作られていますので、トルコ語の「平和」の意味である「バルス(バルシュ)」という意味がこの言葉にだけ唐突に込められているというのは考えづらいです。

といったわけで既に結論は出てしまったのですが、この『準備稿』、実は書籍『The art of Laputa』で読むことができます。よって以下、その「バルス(とじよ)」が書かれた場面を抜粋してみます。

※ちなみに、こちらは準備稿ですので、このシーンに来るまでにもいくつか完成版とは違った展開があり、それもまた大変に面白いので(ラピュタに到着するくだりや、到着した後はパズーとシャルルが行動をともにするなど)、純粋に読み物としてもオススメです。

クライマックスは玉座ではなく、ラピュタの外壁で起こります。
パズー「ワアーッ」
二人の身体、外壁を離れ、ちぎれた根ともつれながら落下していく。殺到するロボット兵。シータの身体をとらえる。ガッ、空中に支えられるシータ。二人の手が離れる。半球体の下へ急速に落下していくパズー。
シータ「パズー!パズー!」
ロボットの腕の中で身をよじり、叫ぶ、半狂乱のシータ。
シータ「はなして!パズーが、パズーが!」
顔をおおって泣くシータを、丁重に抱くロボット兵、ゆるやかに旋回する。

外壁・バルコン

やれやれとピストルをもどすムスカ。ロボット兵がシータを抱いて着地。ソッと小さな女王をおろして飛びたつ。ムスカ、皮肉っぽい顔で泣きぬれているシータを眺めている。
ムスカ「ショーの幕切れとしては仲々の見ものだったよ」
涙にぬれた顔をキッとあげるシータワナワナと震える唇。蒼白な異様な顔。
ムスカ「どうしたね。もっと泣いてかまわんよ」
シータ、自分の胸に飛行石をあてる。
シータ「やっと判ったわ。もっと早くこうするべきだったって……」
ムスカ「……!?」
シータ「ラピュタが亡びる時、王様も亡びるべきだったのよ。決して使ってはいけない言葉こそ、本当は使わなければいけない言葉だったんだわ」
ムスカ「ナッ、なにっ」
シータの凛とした声がひびく。
シータ「バルス(とじよ)」
異様に輝きを増す飛行石。

以上、バルスはトルコ語ではなく、ラピュタ語で「とじよ」という意味でした。ちなみに…「バルス」というフレーズ自体は、諸星大二郎先生の作品『マッドメン』のセリフから取ったのでは?という説がありますが、憶測としては、こちらの場合は可能性は高いのでは?と個人的には思っています。

もう一つの「バルス」 -宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代-
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