2018-04-25

『ガンダム』の生みの親、富野由悠季の語る宮崎駿と手塚治虫


ガンダムの生みの親、富野由悠季さんが宮崎駿監督と手塚治虫先生について語っている記事がありましたので、ご紹介します。

以下、その引用です。
――富野監督は、宮崎駿監督と同じ1941年生まれの同世代です。宮崎監督は先日、監督復帰を宣言されていますが、同じアニメ監督として意識される点はありますか?

富野由悠季 同世代だから意識はします。かつて一緒に仕事をしたこともありますし、バカにされたこともある立場の人間ですから、嫌でも意識はします。

――バカにされた、とはどのようなことなのでしょうか。

富野由悠季 これは説明できない部分でもあります。「そこを言ってくるか」という見識、知識の問題です。宮崎監督と自分を比べると、その点では歯が立たちません。さっきから僕が言っている「メカが好き、ロボットが好き、だけでロボットものが作れると思うなよ」と強調しているのは、言ってしまえば、宮崎監督が僕に言ってくれたことなんです。何を言われたかと言うと、「富野くん、それ読んでないの?」その一言。宮崎監督が聞かれたのは“堀田善衞“氏の著書で、知らない本ではなかったから、本当は反論したかったけど言葉が出てこなかったんです。家の本棚にはその本があって、半月前に半分くらい読んだ本でした。宮崎監督は大学時代から堀田善衛氏の本を読んでいて、アニメ作家になってからはその人とも付き合いがあったようです。そういう意味で学識の幅とか、深みが圧倒的に違う、僕では競争相手にならないと思いました。

「それ読んでないの?」とはキツイ言葉です(笑)個人的には教養ってどこまでが必須なんでしょうね?とも思ってしまうのですが…ある一定の世代にとっては堀田善衛さんは必読なのでしょうか?手厳しいですね。ちなみに、実は高畑勲さんも似たようなことを言うそうなので、宮崎さんはその影響を受けているのかもしれませんね。

ここからは手塚治虫先生を交えて、二人の「凄み」が語られます。

――1974年に放送されたTVアニメ『アルプスの少女ハイジ』ではいっしょに仕事をされています。宮崎監督の仕事ぶりというのは?


富野由悠季 当時、『ハイジ』であれば5日もらえれば1本の絵コンテを書いてみせる、という早書きの自信がありました。僕は虫プロ時代(アニメ制作スタジオ『虫プロダクション』)に手塚治虫先生の早書きも見ていますが、手塚先生と宮崎監督の動画はちょっと違います。宮崎監督はTVサイズに合わせたものを描く。それに比べて、あくまで手塚先生はアニメに憧れているディズニー好き、という印象でした。ただアニメではそうだけど、手塚先生は漫画家、ストーリーテラー、アイデアマンとしてだったら誰にも負けないでしょう。宮崎監督より3倍くらい上かも知れません。そんな2人の早書きを見ていたら、僕なんか歯が立たないとわかってしまいます。


――手塚治虫、宮崎駿という二人の凄みとは?


富野由悠季 手塚・宮崎のような作り手をそばで見ていると、ひとつの目線だけでアニメを作れるとは思えなくなります。宮崎監督は『紅の豚』が作れるから『風立ちぬ』も作れるんです。どういうことかというと、メカのディテールはもちろん物語の描き方も熟練しています。だから、『風立ちぬ』みたいな巧妙な作劇ができるんです。僕からすると、あの作品はアニメという枠を超えた“映画”なんです。最近でいうと、片渕須直監督の『この世界の片隅に』が、アニメではなく“映画“であると言えます。その凄さを理解したうえで、僕はこの年齢になっても巨大ロボットもので“作劇のある映画”を作りたいと思っているわけです。

ガンダムを生み出している時点で富野さんも相当すごい方だと思うのですが、全編を通して宮崎さんには勝てないということを告白しています。同じ年の同業者に負けを認めるというのは相当な勇気が要ることだと私は思いますが、あの富野さんをして負けを認めさせてしまうのが宮崎さんの実力なのでしょうか。

ちなみに、当ブログでは宮崎さんの手塚先生に対する思いもご紹介しておりますので、興味のある方はご覧になってみてください。【尊敬と失望。宮崎駿監督の手塚治虫先生への複雑な思い。


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