スタジオジブリ第6作目の作品『紅の豚』。
(トップクラフトのナウシカを含めると7作目)
カッコイイとは、こういうことさ。
そんな原作といえるマンガ『飛行艇時代』が収録されているのが、宮崎駿の趣味全開の傑作コミック本『宮崎駿の雑想ノート』です。この本、密度が濃い!オススメです。
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そんな『紅の豚』ですが、本編と絵コンテでは、エンディングに少し違いがありました。
まずは映画本編の終盤から振り返ってみます。ポルコとカーチスの決闘は、いつしか素手での殴り合いに。激しい殴り合いの末、なんと二人はダブルノックアウト!
海に沈んだまま起き上がれない二人。そのままカウントが続いていく。相打ちか!?と思われたその時、ジーナがポルコに近づき一言。「マルコ、マルコ聞いてる?あなた、もうひとり女の子を不幸にする気なの!?」この一言でかろうじて起き上がり、勝利するポルコ。
しかしポルコは、フィオをジーナに任せてむりやり自分の元から離すことに。
イタリア軍出動の情報を知り、散り散りに去っていく空賊たち。残ったポルコとカーチス。「イタリア空軍をよそに引っ張っていくか?」と問いかけるポルコだったが、そんなポルコを見たカーチスが驚愕する!
一体、カーチスが見たポルコの顔とは…!?
…そしてフィオの回想へ。ポルコはそのままフィオの前に姿を現さなかったこと。その代わりジーナとの友情関係が続いたこと。あれからいくつも大きな戦争や動乱があったこと。ジーナの店には今もなじみの客(マンマユート団ほか空賊たち)が来ていること。
ドナルド・カーチスは俳優になっていた。フィオ「そうそう、まだ大統領にはなってないけど、ミスター・カーチスも、時々手紙をくれる。『あのアドリア海の夏が懐かしい』って。」
「ジーナさんの賭けがどうなったかは、私たちだけの秘密…。」
そして、加藤登紀子さんの『時には昔の話を』が流れるエンドロールへ。歌が終わると、赤い飛行艇が雲の向こうへと消えていき、物語は終わりを迎える…。
…さて、このエンディング、絵コンテではどうなっていたのかというと、フィオの回想とその最中に流れるシーンが、映画とはやや異なっていました。途中まではほぼ一緒なのですが、フィオとジーナとの関係が続いている、という話のあとは、こうなっています。
今でも夏になると 私は休暇をホテルアドリアーノで
すごすことにしているの
マルコ・パゴット大尉がジーナさんの庭をおとずれたかどうかは、
私達の秘密
ハリウッドのスターになったミスター・カーチスは
大統領になった今も あの時のアドリア海がなつかしいと
時々手紙をくれるわ
ゴーッと飛ぶジェット機
ポルコを「マルコ・パゴット」と本名で呼んでいることや、なによりカーチスが大統領に【なっている!】という衝撃の相違が、「私たちの秘密」という台詞より後に配置されています。
そしてもうひとつ、「ラスト大改訂版」と銘打った、構成がすこし変わっている別のエンディング案もあるのですが、こちらの方はというと…
ピッコロ社をついだあとも
夏の休暇はホテルアドリーア(原文ママ)ですごすのが私の決まり
大きな戦争や動乱をくぐりぬけて
マダムジーナのお店は今もアドリア海の真珠と呼ばれている
マルコ・パゴット大尉がジーナさんのお庭を訪れたかどうかは、
私達の秘密
そうそう、ミスター・カーチスは大統領になった今も
時々、手紙をくれるわ
やっぱりカーチスが大統領になっている!
さて、この後の展開はというと、実は映画には全くなかったシーンが絵コンテにはあり、それが絵コンテ版のラストシーンとなっているのですが、それはまた次回、ご紹介したいと思います。
【紅の豚 スタジオジブリ絵コンテ全集〈7〉】より
ちなみに、加藤登紀子さんの歌うエンディング曲『時には昔の話を』が流れる中、スタッフロールとともに出てくるあの挿絵ですが、
この絵の数々は以下の本『時には昔の話を』でゆっくり見ることが出来ます。
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