2022-01-07

『千と千尋の神隠し』のイメージアルバムを聴けば千と千尋の世界をより深く理解できる!


スタジオジブリの作品には、ほとんどの場合において「サウンドトラック」と「イメージアルバム」の2つの音楽アルバムが存在しています。そしてこの2つのアルバムの違いは非常に面白く、特にイメージアルバムは作品を理解する上で非常に役に立つ音楽集になっていることが多々あるのです。

「サウンドトラック」と「イメージアルバム」はどう違うのか?まずサウンドトラックは、ご存知の通り映画などの媒体で使用された音声や曲を収録したものです。対してイメージアルバムは、映画の制作段階でその作品の世界観からイメージして作られた楽曲集のことを指します。

ですから、映画本編で使用される劇中音楽とはやや異なっている曲、全く使用されなかった曲も数多く存在します。そしてこのサウンドトラックとイメージアルバムの違いがとても面白く、またイメージアルバムには「映画本編では使用されなかった曲」として切り捨てるのはあまりにも惜しい、むしろ作品を理解する上で非常に重要な意味を持っている曲が多々あるのです。

そんなジブリのイメージアルバムの中でもトップクラスに必聴なアルバムが『千と千尋の神隠し』のイメージアルバムです。


このイメージアルバムには、久石譲さんの生み出した音楽とともに宮崎監督が作詞した歌詞がいくつか付けられており、それらは千と千尋の神隠し本編では使用されていないにも関わらず、映画本編の物語やキャラクターの心情を補足するような、千と千尋の神隠しを深く理解する上でも重要な音楽集になっているのです。

今回は、それらの作品の中でも歌詞のある曲のその歌詞を、もちろん全文掲載はできませんので、一部を抜粋してご紹介致します。


神々さま


油屋に来た神様たちを歌った曲であり、コミカルな「和」全開で、神様たちの湯治の様子が目に浮かぶような歌詞となっています。

およそ名も無き 神々は
今日もほとほと くたびれて
腰はガタガタ 膝は折れ
腹のたるみは 手にあまる

(中略)

長い間の念願の 二泊三日の骨休め
やって来たのは となりの世界の湯屋「油屋」
よもぎ湯 硫黄湯 泥湯に塩湯
たぎる熱(あつ)風呂 ぬるぬる風呂
氷の浮いた冷やし風呂
少しは元気になりたいと
やっと貯めたる銭いくばくか
握りしめても 熱くもならぬ

(中略)

長い間の念願の 二泊三日の骨休め
やって来たのは となりの世界の湯屋「油屋」
竈(かまど)神 井戸神 雨戸神 屋根神 柱神 便所神
田の神 畑神 山の神
舗装道路の並木神 汚れもひどき川の神
長い間の念願の 二泊三日の骨休め
(腰の抜けたる泉神)
やって来たのは となりの世界の油屋「油屋」
(空気の神はもう来ない)
(電気達には神はない)

それにしても、神様たちは油屋に遊びに来ているのではなく、クタクタになった末の湯治としてやって来るのですね、なんとも世知辛い世の中です…。ところで、「電気達には神はない」という最後の歌詞、文明の象徴とも言える電気に「神はない」という思想がいかにも宮崎監督らしい気がします(笑)。


油屋


油屋で働く従業員たちの辛さが伝わってくるような、労働の労苦を歌ったなんだか切なくなってくる曲となっています。

さっき寝たと思ったら もう仕事だ
終わったと思ったら もうはじまりだ
身体は重いぜ 気持ちはもっと重いぜ
仕事があるうちが華なんだって
お前さん

婆ちゃんが言ったよ
(さっきまで娘だった婆ちゃんが)
きれいなのは若いうちだけだよって
(お前さん お前さん)

爺ちゃんが言ったよ
(さっきまで若かった爺ちゃんが)
残るのは人生だけさ
重くてだるい人生だけだってさ


さみしい さみしい


個人的には非常にオススメの曲です。明らかにカオナシの心情を歌った物凄く怖い歌詞なのですが、ムッシュかまやつさんの軽快な歌い声と、久石譲さんのほんわかした曲調によって、妙にほっこりした気分にもなってしまうという珍曲となっています。

さみしい さみしい 僕ひとりぼっち
ねェ 振り向いて こっち向いて
たべたい たべたい 君 たべちゃいたいの
君、かわいいね
きっと寂しくなんかならないんだね

昨日も見た夢は おとといにも見た夢
明日もあさってにも 見る夢は
やっぱり 届かない夢

欲しい 欲しい 僕もっと欲しい
これもいいんじゃん これ欲しい
あげる あげる これみーんなあげる
君も欲しいだろう あげるから
君、僕にくれないかな

(中略)

やっぱり届かない夢
君、おなかに入れたいの


白い竜


歌詞を見ていただければ一目瞭然、ほぼ『ハクのテーマ』といっても差し支えない歌です。ゆったりさと力強さが共存した幽遠な曲調により、まさにハクにピッタリな歌となっています。

月の海 かすめてとぶ
わたしのたいせつな 白い竜
はやく はやく もっとはやく
わたしの元へと

銀の鱗 血にまみれ
奪われた名前求めて
あてどなく さすらう
美しい白い竜
いとしい白い竜
千の夜を飲み
千尋の澪に鎮め

錆の風 塩吹く土
わたしの高なる 白い胸
はやく はやく もっとはやく
豊かにあふれよ

(後略)


以上、歌詞の付いている曲をかいつまんでご紹介しましたが、歌詞のない曲(あの日の川へ、夜が来る、不思議の国の住人、ソリチュード、海、千尋のワルツ)もまた、千と千尋の神隠しを補完する上で重要な曲ばかりであり、サウンドトラックと比べてみるのも非常に楽しい体験になると思いますので、是非聞いてみて頂きたいです!

※ちなみに、千と千尋を理解する上でもうひとつ重要な幻のテーマ曲「あの日の川で」を紹介した記事もありますので、こちらも是非ご覧になってみてください。リンクはこちら:【宮崎駿の書いた『千と千尋の神隠し』の幻のテーマ曲「あの日の川で」 

今回は『千と千尋の神隠し』のイメージアルバムをご紹介しましたが、千と千尋に限らず、ジブリ作品のイメージアルバムはどれもサウンドトラックとは違う面白さがあるので、オススメですよ!