2016-10-22

「できません」と言っていた!『借りぐらしのアリエッティ』の監督、米林宏昌さんの人柄がわかる初監督への経緯と感想


『借りぐらしのアリエッティ』、監督は宮崎駿さんではなく、これが初監督作である米林宏昌さんです。

あの“ジブリ”作品の監督を務めるというのは並々ならぬプレッシャーがあったであろうと思われますが、一体どういう経緯で監督を務められたのでしょうか?今回は、米林さんが監督になった経緯と、その驚くべき感想を書籍『ロマンアルバム 借りぐらしのアリエッティ』『ジブリの教科書16 借りぐらしのアリエッティ』より引用してご紹介します。


以下、書籍『ロマンアルバム 借りぐらしのアリエッティ』より、米林さんへのインタビューです。
ーーアリエッティの監督はどのような経緯で引き受けることになったのでしょうか?

米林「2008年の秋に鈴木さんに『ちょっと来てくれ』と呼び出されまして、行ってみたら星野社長や宮崎さんや鈴木さんといった錚々たるメンバーが座っていたんです。一介のアニメーターに何の用だろうとドキドキしながら話を聞いたら、『監督をやらないか』と。自分の中では『そんなバカな』って感じでした。演出の経験もないし、コンテも描いたことがない。できるわけがないと思いました」

ーーいきなり劇場公開作品の監督となると、それは驚きますよね。

「そもそも監督というのは、人に伝えたい何かを持っていなければダメだと思っていたので、『そういう主義や主張』はぼくにはないので出来ません』と言ったんです。そうしたら宮崎さんと鈴木さんが声を揃えて『そういうものはこの本にあるから大丈夫だ』と」(注:「この本」とはアリエッティの原作『床下の小人たち』のこと)

この経緯に関しては、鈴木さんも同じエピソードを覚えています。以下、『ジブリの教科書16 借りぐらしのアリエッティ』より引用です。

麻呂(米林さんの愛称)が顔を出すやいなや宮さんは告げました。
「麻呂、次回作はお前が監督をやれ!」
 彼にとってみれば青天の霹靂ですよね。しかも、麻呂って慎重な性格だから、すぐには返事をしないんです。でも、宮さんも気が短いから、「いいから、やると言え」とせっつきます。しばらくして、麻呂はやっと重たい口を開きました。
「映画って思想とか主張がないと作れませんよね。僕にはそれがありません」
 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、宮さんと僕は机の上の原作本を左右から同時に掴み上げて、「それはこの中に書いてある!」と叫んでいました。

「思想や主張がないので出来ません」とハッキリ言ってしまう所が凄いですね(笑)ある意味ハッキリした性格というか、どっしりと構えた性格なのでしょうか?しかしそれにも「思想・主張は原作に書いてある」と二人で返して説得に当たる宮崎・鈴木さんの両者も流石です。

結局はアリエッティの監督を引き受けた米林さんですが、初監督を務めた見ての感想はどうだったのでしょうか?

書籍『ロマンアルバム 借りぐらしのアリエッティ』より
ーー監督という仕事には、再びチャレンジしたいですか?

「終わりに近づくにつれて、もう二度とやりたくないという気持ちがむくむくと生まれてきました(笑)。本当に大変な仕事なんですよ。たまたま今回はすばらしい人材に恵まれましたが、次はどうなるか。自分としては、すごく絶妙なタイミングで監督作を作れたんだと思っています。奇跡的なタイミングなんじゃないかと。だからもう一度監督をしたくなるかどうかは、今は考えられないですね(笑)。(後略)」

お茶を濁さず「もう二度とやりたくない」とハッキリ言ってしまうのも流石といいますか…それほど大変な仕事だったのでしょうね。しかし、米林さんは『思い出のマーニー』でもう一度監督を務めておりますので、やはり監督としての適性があったのかもしれません。さて、米林さんがまたジブリで監督を務められる日は来るのでしょうか?

ちなみに米林さんが監督に抜擢された理由、それは一言で言うと鈴木プロデューサーの「思いつき」だったそうです。また宮崎監督はこのように言っています。こちらをクリック






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