2016/10/09

『風の谷のナウシカ』 幻のエンディング曲とその歌詞


『風の谷のナウシカ』のラストシーン。王蟲の大群に轢かれたナウシカは、王蟲たちの神秘的な力により息を吹き返す。「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」その姿は古き言い伝えの姿そのものだった。

物語は幕を閉じ、エンディングには久石譲さんよる『風の伝説』が流れます。しかし、当初ナウシカのエンディングには違う曲が流れる予定でした。今回は、書籍『宮崎駿全書』より『風の谷のナウシカ』のエンディングに使用されるかもしれなかったソ連の歌手による『大地のうた』と、宮崎監督が作詞したエンディング曲用の歌詞案、それが頓挫してしまった経緯をご紹介します。

以下、『宮崎駿全書』より引用です。
 高畑・宮崎は「全篇を感銘深く締めくくるエンディングに真実の歌がほしい」との見解で一致しており、その脳裏には、ソ連のギター弾き語り歌手、ウラディミール・ヴィソツキーの「大地のうた」があった。これは、ソ連・フランスなどで大ヒットした日本未発売の隠れた名曲であり、音楽に造詣の深い高畑が宮崎に勧めた。その詞は次のような痛切なものであった。

誰がいったのか すべてが灰になってしまったと
もう大地に種を蒔かないのか
誰がいった 大地は死んでしまったと
いや 再び息を吹き返している

歌詞だけを見るとナウシカの物語を締めくくるにピッタリですが、実際に歌を聞いてみますと、非常に“渋い”歌で、これがナウシカのエンディングに流れていたとしたら、良くも悪くも映画全体への印象を大幅に変えかねないものになっていたと思わされます。以下がその「大地のうた」です。



いかがでしょうか?私見ですが、非常に魂のこもった歌い方で素晴らしい曲ではあると思うのですが、ナウシカのエンディングにはあっていないように思いました。そしてご存知の通り、「大地のうた」はエンディングで使用されることはありませんでした。

 ヴィソツキーは八〇年に逝去しており、「大地のうた」は版権問題などで試用できず、高畑・宮崎・久石は三人でオリジナルの主題歌制作を試みた。久石は、ロシア風のシャンソンを意識して曲を書き下ろし、作詞は宮崎自身が担当した。宮崎の用意した詞は次のようなものであった。

錆の砂漠の彼方から 風は来た
腐った海をこえて 風は見た
大地が固く心を閉じたのは
やき払われた悲しみから
種が石になって 死んだのは
ひきさかれた いたみから
白い翼をもった 胸高き風よ
はるかな地へ すぎゆく風よ
種は死にはしない
母は子等を見すてはしない
大地は 今 心をひらく

 この新主題歌は、丁度来日中だったスーダンの弾き語り詩人、ハムザ・エルディの歌唱で実現する筈だった。しかし、ハムザの歌は独自のアレンジでメロディが異なってしまい、何度テイクを重ねても上手く行かず、時間切れで断念したという経緯があった。
 結局、エンディングにはインストゥルメンタルの「風の伝説」が使用された。この主題歌をめぐる紛糾も、以降の作品に教訓として生かされることになる。

「大地のうた」の代わりに宮崎監督が歌詞を担当したことにより、ナウシカの世界と一致したものが結果的に作られることとなりましたが、これも頓挫。エンディングにこの歌詞がついた曲が流れていたとしたら、やはり作品の印象は大きく変わるものであっただろうと推測されます。しかし、結果的には「風の伝説」が物語を締める曲としてはふさわしかったのではないでしょうか?「風の伝説」は耳に残りますし、歌詞はなくとも魂の揺さぶられる曲であると思います。

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