今回は、スタジオジブリに縁が深いアニメーターであり、宮崎駿作品で長年に渡り主要スタッフとしてご活躍された二木真希子さんの絵物語『世界の真ん中の木』をご紹介します。
あらすじ
物語の舞台は、世界の真ん中に立っている一本の大きな木。
その木の根元の小屋には、おばあさんと、
シシという名の女の子が住んでいた。
成長するにつれ、いつしかシシは
この木に登ってみたいと考えるようになっていった。
しゃべるカエルや不思議な生き物たちと出会いながら、
シシは木を登っていく。
シシと同じく鳥を求めて異国から来た少年「サマ」との出会い。
シシはやがてついに金色の大きな鳥と出会うが…
木が枯れゆく運命であることを知った二人は木を降り、冒険は地中へと向かう。
そこで出会う謎の巨大生物。
地中を流れる光る海。
二人は木を蘇らせることができるのか…?
以上がこの作品の主なあらすじとなっています。派手な展開はありませんが、どこかジブリ作品を彷彿とさせる、静かで美しい絵物語です。特に生い茂る樹々や植物の描写は目を見張るものがあります。ご興味のある方は是非。追記二木真希子さんが、2016年5月13日、58歳の若さで亡くなられたそうです。心から哀悼の意を表します。宮崎駿さんは同書のあとがきで、二木さんのナウシカ、ラピュタ、トトロ、魔女の宅急便での仕事を讃えた後、このように評しています。
二木さんは不思議な人で、よく傷ついた小鳥や親とはぐれたヒナを拾います。そのたびに仕事を放り出して、生かそうと努力し、多くの場合報われぬ結末を迎えるのですが、その時の痛みが「ナウシカ」でも王蟲の仔の表現を、視覚から触覚にまでつきつめさせているようです。ナウシカの身体に触れる王蟲の子の硬い甲皮の肌ざわりや、伝わって来る体温までも実感できる人なのでしょう。視覚だけでなく、触覚を表現しようとするのが、二木さんのアニメーションの特長だと思います。人間以外の生きものに強い関心とするどい観察力を示す彼女の感受性のアンバランスは、長所とも短所ともいえるのですが、私たちの映画では貴重な存在に彼女をしていることは間違いありません。
ただ、残念なことに、現状の日本のアニメーションでは、彼女の力を発揮する場が多くありません。植物の描写などは、もっとも避けて通られてしまうのです。また、一秒当りいくらという出来高払いの賃金体系も、彼女の努力に正当に報いることを難しくしています。 (中略) ていねいに、時間と労力をいとわずに築いた、二木さんの新しい世界が、たくさんの人々に受け入れられることを、心から望んでやみません。 |
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