2018-10-15

鈴木プロデューサーの語る高畑勲監督の恐ろしさ


故・高畑勲監督は恐ろしい人だったようです。今回は、書籍『ジブリの教科書19 かぐや姫の物語』より、鈴木プロデューサーの語った高畑監督の恐ろしい一面をご紹介します。

以下、その引用です。
 どんな人の人生にも功罪両面があるし、映画監督という仕事をしている以上、いつもいい人でいることはできません。人の人生を変えてしまうこともあるし、ときには恨まれることもある。とくに高畑さんの場合、いい作品を作ることがすべてであって、その他のことにはまったく配慮しない人でした。よくいえば作品至上主義。でも、そのことによって、あまりにも多くの人を壊してきたことも事実です。 
 『火垂るの墓』の作画監督を務めた近藤喜文もそのひとりでした。最初で最後の監督作となった『耳をすませば』のキャンペーンで仙台を訪れた日の夜、高畑さんのことを話しだしたら、止まらなくなりました。「高畑さんは僕のことを殺そうとした。高畑さんのことを考えると、いまだに体が震える」。そう言って二時間以上、涙を流していまし た。彼はその後、病気になり、四十七歳で亡くなってしまいます。火葬場でお骨が焼き上がるのを待つ間、東映動画以来、高畑・宮崎といっしょに仕事をしてきたアニメーターのSさんがこう言ったんですよ。「近ちゃんを殺したのは、パクさんよね」。瞬間、 場の空気が凍りつきました。ある間をおいて、高畑さんは静かに首を縦に振りました。


近藤喜文さんが一体何をされたのかまでは分かりません。が、涙を流すほどの行動とは、よほど恐ろしい目に遭ったのだとは推測できます。「近ちゃんを殺したのは、パクさんよね」と言わしめるほどのこと…この言葉、恐ろしい一言ですね。

続きます。

 作品のためなら何でもする。その結果、未来を嘱望された人間を次から次へと潰してしまった。宮さんはよく「高畑さんのスタッフで生き残ったのは、おれひとりだ」と言います。誇張じゃなく、本当にその通りなんですよ。高畑さんの下で仕事をすれば勉強になるとか、そんな生やさしいことじゃないんです。酷使され、消耗し、自分が壊れるのを覚悟しなきゃいけない。 「パクさんは雷神だよ」。宮さんは最近そう言っていました。高畑さんが怒るときはい つも本気なんです。その人を鍛えるため、仕事への姿勢を変えるために言うんじゃない。 本気で怒っているから、何の配慮もしません。逃げ道も作らないし、あとで救いの手を出すこともない。だから、怖いですよ。 『火垂るの墓』の製作に携わった新潮社の新田敏さんがいみじくも言っていました。 「松本清張や柴田錬三郎、安部公房、いろんな作家と付き合ってきたけど、あんな人はいなかった。高畑さんと比べたら、みんなまともに見える」 
 僕もいろんな人を見てきましたけど、高畑さんみたいな人は他にいません。高畑さん はスタッフに何かをしてもらっても、感謝したことがありません。いっしょに作品を作っているのだから、監督として感謝するのはおかしいという考え方なんです。論理的なのかもしれないけれど、人間的な感情に欠ける、破綻した考え方ですよね。

スタジオジブリはよく後継者を育てていないのではないか?と語られることがあります。その秘密がここにあるのかもしれません。高畑監督の下には宮崎監督しか残らなかった、残れなかった。高畑さんのような人は他にいないと言わしめる人、鈴木プロデューサーも仰っていますが、どんな人間にも功罪両面がありますし、天才とはしばしば変わり者だと言われますが、高畑監督はずば抜けて恐ろしい人だったようです。

一体、何があったのでしょうね?私達は漏れ聞くところでしか推測することはできませんし、もちろんこれは鈴木プロデューサーの語る一面であり、他の人が語ればまた違う意見が出てくるのかもしれませんが…。高畑監督の恐ろしい一面は、この書籍『ジブリの教科書19 かぐや姫の物語』の他の部分でも触れられておりますので、興味のある方はご覧になってみてください。




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