『On Your Mark』。CHAGE & ASKAの同名曲のために作られたプロモーションフィルムで、宮崎駿原作・脚本・監督の6分40秒の短編アニメーション映画。
SF的な近未来の世界観が舞台で、ジブリ作品としては異質であることが魅力の作品です。
今回は、書籍『出発点 1979~1996』でのインタビューから、宮崎監督が『On Your Mark』について語った部分を一部抜粋してご紹介いたします。この作品の意図するところは何か?どんなメッセージが隠されているのか?その理解を助けるヒントになるかもしれません。
以下、インタビュー内容です。
ーー冒頭の、のどかな田園風景の中に建つ奇怪な建物は何ですか。
宮崎「(前省略)地上には放射能があふれていて、もう人間は住めなくなっている。でも緑はあふれていて、ちょうどチェルノブイリの周囲がそうだったようにね。自然のサンクチュアリ(聖地)と、化している。で、人間は地下に都市を作って住んでいる。
実際はそんな風には住めなくて、地上で病気になりながら住むことになるとは思いますが。」
宮崎「(前省略)地上には放射能があふれていて、もう人間は住めなくなっている。でも緑はあふれていて、ちょうどチェルノブイリの周囲がそうだったようにね。自然のサンクチュアリ(聖地)と、化している。で、人間は地下に都市を作って住んでいる。
実際はそんな風には住めなくて、地上で病気になりながら住むことになるとは思いますが。」
まずはこの世界の状況についての話。地上が放射能にあふれている世界、という話は、何となく映像から察することが出来ますよね。
そして「人々は既に地下に住んでいる」とのこと。映像から確認してみますと、ちょうど4:00あたりのシーン、よく見ると確かに都市が地下に作られていることが分かるシーンがあります!
そして空には、都市の天井に透明の天蓋状のドームが掛かっているのが見えます。
インタビューは続きます。
ーーこのアニメは「On Your Mark」の、音楽映画作品として作られていますね。
宮崎「『位置について』という意味のタイトルだけれど、その意味をわざと曲解して作ってます。いわゆる世紀末の後の話。放射能があふれ、病気が蔓延した世界。実際、そういう時代が来るんじゃないかと、僕は思っていますが。
きっとそういう時代は、そのすごくアナーキーになっていく一方で、体制批判というようなことについても、ものすごく保守化しているんじゃないか。それはまだ失うものがあると思っているから、何もなくなると、ただのアナーキーになっていって、のたれ死が始まるんです。そういうものを紛らわせてくれるのは『ドラッグ』や『プロスポーツ』や『宗教』でしょう?それが蔓延していく。そういう時代に、言いたいことを体制から隠すために、隠語にして表現した曲と考えてみた。ちょっと悪意に満ちた映画なんです(笑)」
ーー例えば「いつも走り出せば、流行の風邪にやられた」という歌詞の。「流行の風邪」というのは、放射能や病気に覆われた世界のことでしょうか?
宮崎「(否定も肯定もせず)地球全体の歴史から見れば、人間の問題なんて流行の風邪みたいなものですからね。」
ーー……二人の警官が救い出す天使は、混沌とした世界の一筋の希望のようにも見えます。「僕らがそれでも止めないのは……」という歌詞の通り、天使を救出するシーンが何度も繰り返されていますが、何度かの失敗の後、混沌とした世界から、一筋の救いのように彼女は青空に飛び立つ。でも、警官たちは地上に取り残されて……。
宮崎「彼女が救世主だったり、救出を通して彼女と心の交流があったというわけではないんです。ただ、状況に全面降伏しないで、自分の希望、ここだけは誰も触らせないぞというものを持っているとしたら、それを手放さなければならないのなら、誰の手にも届かないところに放してしまおうという。そういうことですよ。放した瞬間に、心の交流がちらっとあったかもしれないけれども。それでいい、それだけでいいんです。……きっとまた彼らは警官の仕事に戻るんです。戻れるかどうか知らないけれど(笑)。」
ーー戻る世界は、また「流行の風邪」の世界。
宮崎「結局、いつもそこから始まるしかない。メチャメチャな時代にも、いいことや、ドキドキすることはちゃんとある。ナウシカの、“我々は血を吐きながら、繰り返し繰り返し、その朝を越えて飛ぶ鳥”なのです。」
宮崎「『位置について』という意味のタイトルだけれど、その意味をわざと曲解して作ってます。いわゆる世紀末の後の話。放射能があふれ、病気が蔓延した世界。実際、そういう時代が来るんじゃないかと、僕は思っていますが。
きっとそういう時代は、そのすごくアナーキーになっていく一方で、体制批判というようなことについても、ものすごく保守化しているんじゃないか。それはまだ失うものがあると思っているから、何もなくなると、ただのアナーキーになっていって、のたれ死が始まるんです。そういうものを紛らわせてくれるのは『ドラッグ』や『プロスポーツ』や『宗教』でしょう?それが蔓延していく。そういう時代に、言いたいことを体制から隠すために、隠語にして表現した曲と考えてみた。ちょっと悪意に満ちた映画なんです(笑)」
ーー例えば「いつも走り出せば、流行の風邪にやられた」という歌詞の。「流行の風邪」というのは、放射能や病気に覆われた世界のことでしょうか?
宮崎「(否定も肯定もせず)地球全体の歴史から見れば、人間の問題なんて流行の風邪みたいなものですからね。」
ーー……二人の警官が救い出す天使は、混沌とした世界の一筋の希望のようにも見えます。「僕らがそれでも止めないのは……」という歌詞の通り、天使を救出するシーンが何度も繰り返されていますが、何度かの失敗の後、混沌とした世界から、一筋の救いのように彼女は青空に飛び立つ。でも、警官たちは地上に取り残されて……。
宮崎「彼女が救世主だったり、救出を通して彼女と心の交流があったというわけではないんです。ただ、状況に全面降伏しないで、自分の希望、ここだけは誰も触らせないぞというものを持っているとしたら、それを手放さなければならないのなら、誰の手にも届かないところに放してしまおうという。そういうことですよ。放した瞬間に、心の交流がちらっとあったかもしれないけれども。それでいい、それだけでいいんです。……きっとまた彼らは警官の仕事に戻るんです。戻れるかどうか知らないけれど(笑)。」
ーー戻る世界は、また「流行の風邪」の世界。
宮崎「結局、いつもそこから始まるしかない。メチャメチャな時代にも、いいことや、ドキドキすることはちゃんとある。ナウシカの、“我々は血を吐きながら、繰り返し繰り返し、その朝を越えて飛ぶ鳥”なのです。」
「自分の希望、ここだけは誰も触らせないぞというものを持っているとしたら、それを手放さなければならないのなら、誰の手にも届かないところに放してしまおう」という宮崎監督の言葉、この発言はとても重要な意味を持っていると思います。
そして意外と言うべきか、喜びというべきか、コミック版ナウシカ(7巻)のセリフまで引用されています。「我々は血を吐きながら、繰り返し繰り返し、その朝を越えて飛ぶ鳥」だと。実際、この作品の映像でも、2人の警官は繰り返し天使の少女を救おうとしています。
そして僕らは いつもの笑顔と姿で
埃にまみれた服を払った
この手を離せば 音さえたてない
落ちて行くコインは 二度と帰らない
君と僕 並んで
夜明けを追い抜いてみたい 自転車
On Your Mark いつも走り出せば
流行の風邪にやられた
On Your Mark 僕らがそれでも止(や)めないのは
夢の斜面見上げて 行けそうな気がするから
On Your Mark
そして僕らは 心の小さな空き地で
互いに振り落とした 言葉の夕立
答えを出さない それが答えのような
針の消えた時計の 文字を読むような
君と僕 全てを
認めてしまうにはまだ 若すぎる
On Your Mark いつも走り出せば
流行の風邪にやられた
On Your Mark 僕らがこれを無くせないのは
夢の心臓めがけて 僕らと呼び合うため On Your Mark
埃にまみれた服を払った
この手を離せば 音さえたてない
落ちて行くコインは 二度と帰らない
君と僕 並んで
夜明けを追い抜いてみたい 自転車
On Your Mark いつも走り出せば
流行の風邪にやられた
On Your Mark 僕らがそれでも止(や)めないのは
夢の斜面見上げて 行けそうな気がするから
On Your Mark
そして僕らは 心の小さな空き地で
互いに振り落とした 言葉の夕立
答えを出さない それが答えのような
針の消えた時計の 文字を読むような
君と僕 全てを
認めてしまうにはまだ 若すぎる
On Your Mark いつも走り出せば
流行の風邪にやられた
On Your Mark 僕らがこれを無くせないのは
夢の心臓めがけて 僕らと呼び合うため On Your Mark
※歌詞全文はこちらからどうぞ http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=34932
この映像作品が私たちに何を伝えようとしているのか?理解を深める一助になったのならば幸いです。
※『On Your Mark』はこちらのジブリ短編集に収録されております。
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