書籍『ジブリの教科書5 魔女の宅急便』によると、このような経緯だったそうです。
しかし、当時のアニメーターさんたちの給料は十万円…厳しい世界ですね。
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大ヒットとなった『魔女の宅急便』だが、宮崎はこの映画の完成後、スタジオジブリを解散する心づもりをしていたという。宮崎の持論の一つに「一スタジオで制作できるのは三作品が限度」というものがある。ある程度定まったスタッフでそれ以上制作を続けると、必ず無理がでるという考えだ。一方、鈴木は「せっかくここまで作ったのだから、もう少し続けたい」と考えた。鈴木と宮崎は話し合いを行い、最終的にスタジオジブリを継続することになった。
そこで宮崎が提案したのが、新人の育成。これまでは一作ごとに解散する方法で制作リスクは低いものの、新人を育てるような体制ではなかった。
その宮崎の提案を受けて、鈴木はスタッフの給与倍増をさらに提案した。というのも、ヒットした『魔女の宅急便』だったが、完成後スタッフの給料が問題になっていたのだ。
(中略)
こうして、ジブリ設立当初の「一本ごとに解散」という方針は大きく転換。
①スタッフの社員化、および固定給制度の導入。資金倍増を目指す。
②新人定期採用とその育成。
という新たな経営方針の下、スタジオジブリは定期的に作品を制作していくことになる。
また、同書で鈴木プロデューサーは以下のように仰っています。
おかげさまで映画は大ヒットしましたが、その一方で、大きな課題も抱えることになりました。制作の最中、宮さんが「いったんここを閉じようよ」と言い出したのです。
宮さんはジブリの設立当初から、「ひとつのスタジオで映画を作るのは三本まで、三本も作ると人間関係がぐちゃぐちゃになってきて、ろくな作品が作れなくなる」と言ってきました。それなのに『魔女の宅急便』は、もう五本目。
でも、僕としてはタイアップをはじめ、新たに覚えたことを活かしてもっと作りたいという思いが強くあった。そこで、宮さんを説得したところ「だけどいまの現実はどうするの?」と言われました。
現実というのはストレートにお金のことです。『魔女の宅急便』の制作費は四億円かかりました。一億円も行かない映画が多かった時代、それはすごい金額です。それだけ用意しても、宮崎駿の求めるクオリティで仕事をしていくと、出来高払いのアニメーター一人あたりの報酬はだいたい月に十万円。一年かけて全身全霊で仕事に打ち込んでも百二十万円にしかなりません。当時でいっても普通の仕事の半分くらいですから、宮さんはすごく心苦しく思っていたんです。
そこで、ジブリはスタッフの社員化と“所得倍増計画”を打ち出しました。ただ、全制作費の九十%以上が人件費ですから、単純にいうと四億円の制作費が八億円になるということです。それをいったいどうやって工面すればいいのか? 『おもひでぽろぽろ』で僕たちは新たな課題に取り組んでいくことになります。
解散の理由は『人間関係』。それだけアニメーションを制作するというのは大変な作業だというのが推測できます。それにしても、ここで解散していたら後の名作たちは生まれなかったのだと思うと、解散しなくて本当に良かったですね。
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