書籍『誰も語らなかったジブリを語ろう』では辛辣なことも言っている押井守さんですが、もちろん絶賛している作品もあります。そのひとつは『めいとこねこバス』、大絶賛しています。そしてもうひとつは、『ハウルの動く城』です。なぜなのでしょうか?
以下、『誰も語らなかったジブリを語ろう』から見てみます。
押井 『ハウル』はいい。ジブリの作品のなかで一番好き。ストーリーが明解じゃないとか、辻褄が合ってないとか、そういうことはいままでの宮さんの映画と何ら変わりはない。そういうことはいまさら言ってもしょうがないから。じゃあ『ハウル』の何を評価するするのか?ひと言で言うと、あのカチャカチャですよ。宮さんが歳を取ったという心境の変化を、カチャカチャがよく表していると思った。
ーーハウルの城のドアに取り付けられたチャンネルみたいなものですね。扉の向こうが4つに分かれている。
押井 僕はあれに本当に感心した。(中略)あれは何を表していると思う?
ーー宮崎さんの心が4つに分かれているということ?
押井 いや、その数は関係ない。女性は判りにくいかもしれないけど、男はすぐ判る。とりわけ親父ならすぐピンとくる。オヤジは無意識にあのカチャカチャをやっているから。つまり、意識的で無意識であろうが、いくつかの人格を演じ分けているんだよ。会社で働いてきたオヤジが家に戻るとカチャっと変わる。どこかでお姉さんよろしくやっているときもカチャっと変わる。息子や娘を相手にしているときも変わる。要するに人間って、いくつかの世界を別々に生きている生き物だということ。そのなかにはモンスターになってしまう暗黒面もある。モンスターになって戦場を飛び回っているダークサイドを必ず抱えて生きているということなんだよ。
オヤジの内面的世界の多重性を、たったあれだけで、説得力をもって表現されたのを映画で観たのはおそらく初めて。僕はとても気に入った。カチャカチャ回して一瞬で切り替わる。素晴らしいよ。
(中略)
こういう表現が生まれたのも、宮さんがカチャカチャで苦労した人だからだと思うよ。
ーーハウルの城のドアに取り付けられたチャンネルみたいなものですね。扉の向こうが4つに分かれている。
押井 僕はあれに本当に感心した。(中略)あれは何を表していると思う?
ーー宮崎さんの心が4つに分かれているということ?
押井 いや、その数は関係ない。女性は判りにくいかもしれないけど、男はすぐ判る。とりわけ親父ならすぐピンとくる。オヤジは無意識にあのカチャカチャをやっているから。つまり、意識的で無意識であろうが、いくつかの人格を演じ分けているんだよ。会社で働いてきたオヤジが家に戻るとカチャっと変わる。どこかでお姉さんよろしくやっているときもカチャっと変わる。息子や娘を相手にしているときも変わる。要するに人間って、いくつかの世界を別々に生きている生き物だということ。そのなかにはモンスターになってしまう暗黒面もある。モンスターになって戦場を飛び回っているダークサイドを必ず抱えて生きているということなんだよ。
オヤジの内面的世界の多重性を、たったあれだけで、説得力をもって表現されたのを映画で観たのはおそらく初めて。僕はとても気に入った。カチャカチャ回して一瞬で切り替わる。素晴らしいよ。
(中略)
こういう表現が生まれたのも、宮さんがカチャカチャで苦労した人だからだと思うよ。
カチャカチャ、男が使い分けるカチャカチャ、それが絶賛の理由でした。
※これのことです。
とはいえ、これって人間なら誰もが持っている気もしませんか?老若男女の誰もがこういう「人によってみせる面が違う」というのはあると思います。というわけで、なんとなく押井さんの言っていることは誰もが理解できることではないでしょうか?
そんな心のカチャカチャをソフィーに見せたハウル。あのシーンはそれだけ心を開いたという意味なのでしょうね。
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