4年前(!)にこのブログでもご紹介した、ブラジル人クリエイターの方々によって制作されていた『風の谷のナウシカ』と宮崎監督に敬意を評する実写ショートフィルム「WIND PRINCESS」が、ついに完成、晴れてお披露目となりました。監督のクリス・テックスさんによれば、トータルで7年の歳月が掛かっているとのこと!
以下、ご覧になれば分かりますように、内容は完全にナウシカ冒頭から王蟲を鎮めるまでを実写で再現したものとなっております。
私の感想の前に、まずこの作品はスタジオジブリの許諾を受けていることを述べておきます。(詳細は東洋経済オンラインの記事をご覧ください。https://toyokeizai.net/articles/-/710755?page=5)
次に冒頭、クリス・テックスさんからの非常に熱い想いが述べられておりますので、そちらをそのまま静止画として掲載いたします。
この短編映画はファン活動の一環として制作されたものです。
これは公式作品ではありません。
この短編映画は、ブラジルのクリエイター仲間が集い、
芸術への愛だけを原動力に7年近くプロジェクトに取り組み、
全額自己負担で制作されたファン作品です。
宮崎監督とスタジオジブリのチームに敬意を表するためだけに制作した作品であり、
全編を無料でオンライン公開します。
この短編映画の制作においては、
いかなる企業からも資金を受け取っていない上、
今後いかなる形でも収益化されることはありません。
この作品はファン活動として、すべての人に向けられて作られたものです。
皆さんを何らかの形で感動させ、
私は宮崎監督の創造する素晴らしい作品の数々に出会えた事に感謝します。
宮崎監督の作品に出会えて、
私はファンタジーと魔法の世界が地球に存在しうると信じることができました。
では、私の感想ですが、まずは音楽。完全に久石譲さんのサウンドに似せています(笑)。この点はオリジナルで行くよりも"ファン"としてはどうしても久石サウンドを再現したかったのでしょうね。
そして映像面。ナウシカ冒頭シーンを再現した実写作品であるがゆえに、いくつかの差異も際立っています。まずは腐海の風景。ナウシカよりも腐海の色彩がややカラフルに描かれており、人間が気軽に立ち入ることが許されない禍々しさは減少しております。
腐海を「恐ろしい場所」というよりは「人の立ち入らない美しい場所」と捉えている印象です。(この印象は特に最後に強まります)
次に気になったポイントはやはり王蟲の目。複眼としていることでややグロテスクさが増しています。
次はメーヴェのシーン。原作よりも強く青白い炎を発して飛んでいます。最初の光るリードを使用して腐海に降りるシーンや、後の閃光弾を使用するシーンと合わせて見るに、ナウシカよりもややSF的な描写が感じられます。
そしてクライマックスの王蟲を鎮めるシーン。王蟲の動きがかなりスピーディに見え、アニメよりも恐ろしい怪物感が出ているのが好ポイントでした。
このシーンではあえて王蟲が上部の枠をはみ出すという演出で
迫力を出しているのが良いですね!
ただし、なぜ王蟲が怒っているのかの理由はカットされていますので、この点は理由を映像化して欲しかったところです。また、メーヴェに乗ってからのシーンはやはり全体的に商業映画に比べると映像面では劣っているのは否めません。
そしてラスト…
主人公がマスクを取ってしまいました!女性の顔を出したかったのでしょうけど、ここでマスクを取ってしまったことで、つまりこの砂漠地帯は汚染されていないのだと示すことになってしまいます!ではなぜ今までマスクを付けていたのか?というツッコミどころが生じてしまいますので、この点は残念ポイントだと思います。
最後はやや厳し目になってしまいましたが、全体的にはナウシカと宮崎監督に敬意を評した素晴らしい短編となっていると思いますので、このような作品が作られたことを非常に嬉しく思います。
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