今回ご紹介するのは、非常に独創的なアニメーションを作るチェコのアニメ作家、イジー・バルタの『ゴーレム』のパイロットフィルムです。5分半ほどのパイロットですが、完成品は凄いものになりそうだと感じられる片鱗を見ることはできると思います。
では、この作品はいつ完成するのか？残念ながら、この『ゴーレム』は1996年にパイロット版が作られたまま、現在まで作品は完成しておりません。製作中止となったのです。理由は、資金難です。
チェコは皮肉なことに、共産主義体制下ではアニメ作家たちは資金の援助を受けてアニメーションを作ることができました。そこには検閲という不自由さはあったものの、体制下でも非常に独創的で質も良いアニメーションがたくさん作られたそうです。しかし1989年に共産主義体制が崩壊、93年にはスロバキアと分離して現在のチェコ共和国が誕生すると、アニメ作家たちは自分たちで資金を調達しなければなりませんでした。「売れる」という勝算がなければ資金は提供されない、それが資本主義の現実。多くのクリエイターがこの現実に直面し、作品を作れなくなったそうです。
噂では断続的にゴーレムの製作は続いているとか、2024年には完成するのでは、という話もあります。そうであって欲しいと強く願っていまが、このような唯一無二の映像体験が味わえそうな作品ですら資金難に遭うという状況に、少し虚しさを覚えてしまいます。
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