今回紹介するのは、日本が世界に誇る人形美術家であり、人形アニメーションの巨匠である川本喜八郎さんの作品集です。期間限定でYouTubeにその代表作のいくつかが収録された動画が『作品集』として公開されておりますので、この機会にぜひとも観ていただきたいです。
川本喜八郎さんのアニメーションの凄み
川本喜八郎さん肖像
NHKで放送されていた『人形劇 三国志』が有名な川本さんですが、その真骨頂は人形を使用したアニメーション作品と言えます。彼の作品はまさに「日本が世界に誇るアニメーション」であり、芸術です。
川本さんの制作した人形アニメーションは他のストップモーションと異なり、表情が一切変わりません。しかし、そこに最大の創造性が隠されています。人形に当たる「光」の角度、強さ、首のわずかな傾き、「風」の表現、そして「間」の取り方、これらから観る人たちは無数の感情を読み取ることができるのです。
それでは、以下がその作品集です。特にオススメは『道成寺』。今昔物語の「安珍清姫」の伝説に材を取った妄執の物語を独自の解釈を加えて映像に置きかえたもの。原作からの主人公を娘ではなく寡婦にすることで、男への執着がより強烈に表現されています。人形からあふれる妄執・情念・執念は必見です。
川本さんの「凄まじい」とすら言えるアニメーション表現はどこから出発しているのか?川本喜八郎 Official Web Siteによりますと、1963年、川本さんは38歳でチェコの人形アニメーションの巨匠イジィ・トルンカに師事したそうです。そこでトルンカ・スタジオの人たちに作ったCMなどのフィルムを見せたところ、それを見たスタジオの人たちから「君は世界に冠たる人形大国の日本から来たのに、なぜこんな(西洋風の)人形を作るんだ」と言われたそうです。川本さんにとってはそれが「目から鱗」であり、その後日本に帰ってきてから能や歌舞伎や人形浄瑠璃を見ると、それまでとは全く違って見えたそうです。
まさに「灯台下暗し」。海外に出て知る自国文化の奥深さ、と言ったところでしょうか。確かに能や人形浄瑠璃は人物の面や表情を変化させることはありませんが、それを他の要素で大きく補い描いてみせます。身近すぎて自覚していないものですが、考えてみれば素晴らしい芸術性です。
ちなみにこのチェコアニメの巨匠であるイジィ・トルンカも、自身の作品において人形の表情を変えることはせず、川本さんの師と呼ぶにふさわしい、非常に近しい表現方法で人形に感情を表す特徴を持っています。川本さんがトルンカに師事したのは運命的だった気がします。



