フレデリック・バック氏が亡くなる8日前、高畑監督は、『かぐや姫の物語』を彼に観てもらうことが叶っていた様子が、『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』で放送されました。これがお二人の最後の出会いでした。その時の状況に関する補足情報です。(二人の関係をご存じでない方は、まずはこちらを是非ご覧ください。)
※以下、番組を観ていない方のために、放送された内容を簡略に記します。
2013年12月、フレデリック・バック氏に『かぐや姫の物語』を観てもらうため、カナダへ向かった高畑勲氏。移動中の車内で「(かぐや姫の物語は)バックさんに啓発されて作ってる作品なんだから、もうバックさんに是非観て頂きたいということをずっと言い続けておったわけです。」「喜んでいただけるんじゃないかって、まあ信じてるんですけどね。」と嬉しそうに話す。
この日のバック氏は、重い病気を患っているが小康状態であったため、作品を観てもらうことが可能であった。ただし体調を考慮して、6分間の予告編だけを観てもらうことに。
再会を喜ぶ二人。バック氏は『クラック!』のラストカットの原画を高畑氏にプレゼントする。
そして予告編が上映される。バック氏は「キレイだ。素晴らしい。」「デッサンの軽やかさ、そして空白、描かれていない空間の素晴らしさ」と賛辞を贈る。しかしバック氏は「できればもう少し観たいな」とさらなる鑑賞を希望。本編を上映することに。
本編が始まると、バック氏は「本当に観られて嬉しいよ。この作品は私の長年の夢がかなったようなものでもあるから」と語る。いつしか二人は手を取り合いながら観ていた。
鑑賞後、「本当にどうもありがとうございました」と感謝する高畑氏に、バック氏は「あなたは才能ある人たち恵まれている。」「大好きな高畑さん、心からありがとう。特別なお土産になりました。私にとっても世の中にとっても。」と賛辞を贈り、「ブラボー」と締めくくった。 (この時高畑氏はおそらく涙ぐんでいた様子)
この8日後、2013年12月24日、フレデリック・バック氏はこの世を去った。
◆『かぐや姫の物語』ノート(163)「笑ってコラえて! 」フレデリック・バックさん宅訪問はバラエティでない形で観たかったですが、色々事情があったようです。生涯長編を作れなかったバックさんが「この作品は私の長年の夢が叶ったようなものでもあるから」と語っていらしたことに感動しました。
— 叶 精二 (@seijikanoh) 2014, 1月 15
◆『かぐや姫の物語』ノート(165)◆伝聞ですが、バックさんは本当に体調が思わしくなく、起き上がることも難しく、当日まで鑑賞が危ぶまれていたそうです。モルヒネも使用されていたとか。「10分以上は…」という周囲の声を抑え本編を鑑賞されたそうです。まさに奇蹟の瞬間であったと思います。
— 叶 精二 (@seijikanoh) 2014, 1月 15
◆『かぐや姫の物語』ノート(164)◆「クラック!」ラストカットの原画がバックさんから高畑さんへの最後のプレゼント。取材中7スタ廊下にバックさんに宛てたスタッフの皆さんの寄せ書き色紙のコピーが飾られていて、絵とコメントがびっしりでとても素敵でした。バックさんに贈呈された筈です。
— 叶 精二 (@seijikanoh) 2014, 1月 15
◆『かぐや姫の物語』ノート(166)◆バックさん宅ではループタイだった高畑監督、ピクサー訪問では勝負タイの森康二さんの「どらねこ」(アニドウさん製)でした。森さんの遺志、バックさんの遺志、「考えさせる」ポール・グリモーの遺志…監督は色々背負って『かぐや姫の物語』を完成させたと。
— 叶 精二 (@seijikanoh) 2014, 1月 15
フレデリック・バックさんは『木を植えた男』制作以前、70年代にモントリオール郊外の26ヘクタールの荒地(元牧場)を購入。以来、地道に2万数千本の植樹を続け、ついに森が復活。共に植樹を行った「高畑勲」「アレクサンドル・ペトロフ」名の樹も。映画のテーマと実生活が合致した偉大な方です。
— 叶 精二 (@seijikanoh) 2014, 1月 14
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