今回は、雑誌『SWITCH Vol.41 No.9』(2023年9月号)より、宮崎監督が『ルパン三世 カリオストロの城』のときに受けた傷について、鈴木プロデューサーが語っている部分をご紹介します。
基本的にこの号のSWITCHは『君たちはどう生きるか』に関する対談やインタビューに大きくページ数が割かれており、作品を理解する上で非常に重要な一冊となっておりますが、他にもこの作品を通して色々なことが語られている雑誌となっております。(追記:このSWITCH9月号は10月号でも行われた対談などと合わせて一冊の書籍になりましたので、この投稿の最後にご紹介しております)
以下、その部分です。
鈴木 宮さんは理想を失わない現実主義者です。『ルパン三世 カリオストロの城』(一九七九年)は興行的には失敗で、数億円の赤字を出た。結局、その瞬間にみんな離れていった。宮さんはいまだにその時のことを引きずっています。その傷は大きいです。
―― 今ではテレビでも繰り返し放映され、ルパンシリーズの傑作とも言われている。大ヒ ット作のような印象があります。
鈴木 本人も残っているんです。自分の作った作品で映画館にお客さんが来なかったというのは忘れない。 巳年なので執念深い。もしかするとね、もしかするとですよ、次にやりたがるのはもうひとつの「カリオストロの城』なのかもしれません。
カリオストロの城の興行収入は6億1000万円であり、当時としても高い数字ではありませんでした。また当時は今よりもずっと「これはルパンではない」というルパンのファンからの批判もあったようです(今でも稀に存在します)。そしてそれによって周りの人たちが離れていった事は、監督としてのキャリア初期の宮崎監督にとって大きな傷となったことは当然でしょう。
宮崎監督は自作の評判や興行成績はちゃんと気にする方で、ポニョの時もその評判に怒っていたそうですし、ナウシカの時も高畑監督に「30点」と言われ、激怒したそうです。『風立ちぬ』でもやはり利益が出たかどうかは気にしていたそうですし、『君たちはどう生きるか』でも「鈴木さん宣伝してください」というメッセージを送っていることから、やはりヒットはして欲しいのでしょう。
多くの人と金銭が動く以上、好きなものだけ作って後は気にしない、ということはクリエイターには残念ながら出来ないこと。それはどんなに大御所になっても避けられない現実なのでしょう。
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