「呼んでいる 胸のどこか奥で いつも心踊る 夢を見たい」このフレーズだけでメロディーが蘇ってくる『千と千尋の神隠し』の主題歌「いつも何度でも」。
この曲、本来は違う映画の企画のために作られた曲であり、千と千尋のために作られた曲ではありませんでした。以下、『千尋と不思議の町 千と千尋の神隠し 徹底攻略ガイド』(角川書店)による、作曲・歌を担当した木村弓さん、作詞を担当した覚和歌子さんのインタビューからの引用です。
木村「もともと宮崎監督のアニメ映画は好きでしたが、『もののけ姫』を見た時に、ものすごく印象に残ったんです。(中略)それからしばらくたったある時、ふと「私も宮崎監督の作品に歌で参加したい」という思いが涙とともにわいてきて、どうしてもその思いを抑えることができなくなってしまい、私のCDとテープを添えた手紙を宮崎監督にお送りすることにしたんです。そうしたら、後日、監督からお返事をいただきまして、「大地震に襲われている東京を舞台にした『煙突描きのリン』という企画を進めているので、もしその作品が形になる時がきたらご連絡するかもしれません」というような内容だったんです。そんなお返事をもらってしばらくしたころ、ふとメロディが湧いてきまして、それがこの曲になったんです。
(中略)
出来上がった歌詞を見たときは、私の漠然とした思いを覚さんが不思議なほどちゃんと汲み取ってくれたと感じました。それで宮崎監督からのお手紙がきっかけで生まれた曲なので、企画の進展とは関係なくご報告のつもりでお送りしました。そうしたらだいぶ経って「とてもいい歌ですが、企画そのものが中止になりました」と、お返事があったんです。」