今回は、『思い出のマーニー』で美術監督を務められた種田陽平さんが著書『ジブリの世界を創る』で、あの押井守監督の凄さを語っている部分をご紹介します。種田さんは押井監督の『イノセンス』に参加していらっしゃいます。それを踏まえてご覧ください。
以下、その部分引用です。
『イノセンス』の企画は当初、『GHOST IN THE SHELL 2』という タイトルで進んでいました。それでぼくも「攻殻機動隊の2をやるんだ」と思い、よし、 これは自分がやるしかないと、二つ返事で引き受けました。
押井監督のリクエストはそれまでに受けたことのないもので、今回の『思い出のマーニー』の仕事とも違います。 「アニメ界には飛行船や武器を描くデザイナーは周りにいくらでもいる。キャラクター をデザインするやつもたくさんいる。けれども、日常的に使うような椅子、コーヒーカ ップ、机はみんな苦手なんだ。だから、そこをやってほしい」ということでした。「基本的な舞台がちゃんとしていないと、いくらメカがカッコよくてもダメなんだ」ということもしきりと言われていました。
そのため、美術部に渡すイメージ画を描くだけではなく、『キル・ビル Vol.1』の仕事で北京にいたときには仏像を買って送ったり、掛軸の漢詩を中国人の書家に書いてもらったりするなど、いろいろな役割を果たしました。アニメ美術では普段手が回らない ところを協力して、凝りに凝って作っていきました。
実写映画と同じスタンスで取り組んだ作品です。
押井守という映画監督は、アニメ界のジャン=リュック・ゴダールみたいな人だと思
います。独特のセンスを持っていて、映画史にすごく詳しく、ロジックもある。それで いて一筋縄ではいかない複雑な部分も持ち合わせていて、インターナショナルな才能を 感じさせる人です。だからこそ、国境を超えて作品がリンクしていく。
フランスでゴダールの映画を見ている人口よりも、フランス国外でゴダール作品を見 てる人の方が多いかもしれない。一般の観客とは少し違う場所に、そういうネットワー クが存在しているのです。誰もが見ている『アナと雪の女王』とは違い、映画人や映画ファンで構成される世界では、また別にやっぱり誰もが見ている作品、見ておかなければならない監督と作品というものがあります。『イノセンス』を作る時点で、押井守と 『GHOST IN THE SHELL』は、すでにその領域に入っていました。 『スワロウテイル』の岩井監督と話していても押井監督の話題が出る。『キル・ビル Vol.1』の撮影監督、ロバート・リチャードソンも『GHOST IN THE SH ELL』が大好きで、映画の冒頭5分をワンカットずつすべて説明できる。オリバー・ ストーンやキアヌ・リーブスと話していても、押井守と『GHOST IN THE SHELL』の話は説明なしで通じるんです。
(中略)
そのため、美術部に渡すイメージ画を描くだけではなく、『キル・ビル Vol.1』の仕事で北京にいたときには仏像を買って送ったり、掛軸の漢詩を中国人の書家に書いてもらったりするなど、いろいろな役割を果たしました。アニメ美術では普段手が回らない ところを協力して、凝りに凝って作っていきました。
実写映画と同じスタンスで取り組んだ作品です。
います。独特のセンスを持っていて、映画史にすごく詳しく、ロジックもある。それで いて一筋縄ではいかない複雑な部分も持ち合わせていて、インターナショナルな才能を 感じさせる人です。だからこそ、国境を超えて作品がリンクしていく。
フランスでゴダールの映画を見ている人口よりも、フランス国外でゴダール作品を見 てる人の方が多いかもしれない。一般の観客とは少し違う場所に、そういうネットワー クが存在しているのです。誰もが見ている『アナと雪の女王』とは違い、映画人や映画ファンで構成される世界では、また別にやっぱり誰もが見ている作品、見ておかなければならない監督と作品というものがあります。『イノセンス』を作る時点で、押井守と 『GHOST IN THE SHELL』は、すでにその領域に入っていました。 『スワロウテイル』の岩井監督と話していても押井監督の話題が出る。『キル・ビル Vol.1』の撮影監督、ロバート・リチャードソンも『GHOST IN THE SH ELL』が大好きで、映画の冒頭5分をワンカットずつすべて説明できる。オリバー・ ストーンやキアヌ・リーブスと話していても、押井守と『GHOST IN THE SHELL』の話は説明なしで通じるんです。
『イノセンス』がなければ、『思い出のマーニー』の美術監督はやっていなかったと思 います。また、アニメに実写のやり方を取り入れるというのは、アニメの製作サイドに とっても大きなチャレンジだったのだと思います。アニメ界に実写美術のぼくを招き入 れ、経験させてくれた押井監督にも、ぼくはとても感謝しています。
種田さんに日用品のデサインをお願いするのは、ミース・ファン・デル・ローエの「神はディテールに宿る」を踏襲したかのような姿勢です。だからこそあの細密で濃縮なアジアンサイバーパンクの風景が『イノセンス』では表現することができたのでしょうね。この「細かな小物にまで気を使う」という姿勢は『思い出のマーニー』でも行われていますので、名作には必要な条件なのかもしれません。
『キル・ビル Vol.1』の撮影監督、ロバート・リチャードソンも『GHOST IN THE SH ELL』が大好きで、映画の冒頭5分をワンカットずつすべて説明できる、オリバー・ ストーンやキアヌ・リーブスと話していても、押井守と『GHOST IN THE SHELL』の話は説明なしで通じる、というこの凄さ!『GHOST IN THE SHELL』の影響力の高さをあらためて思い知らされますよね。
特にキアヌ・リーブスは『マトリックス』という『GHOST IN THE SHELL』から多大な影響を受けている作品の主演をしていますから、彼に通じるのは当然かも知れませんね。
「映画人や映画ファンで構成される世界では、また別にやっぱり誰もが見ている作品、見ておかなければならない監督と作品というものがあります。『イノセンス』を作る時点で、押井守と 『GHOST IN THE SHELL』は、すでにその領域に入っていました。」
もはやベタ褒めの『GHOST IN THE SHELL(攻殻機動隊)』、今なおサイバーパンクSFの到達点として、まだ観たことがない方、観ておけなければいけない作品かもしれませんよ!
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